2006年10月06日

国内屈指のRNAi企業・アルファジェン社

こんにちは。清宮(せいみや)です。

先日RNAiの研究者等がノーベル医学賞を受賞しました。

 ▽RNA干渉を発見した2人の研究者にノーベル生理学・医学賞が授与される
  http://www.biotoday.com/view.cfm?n=15390

国内では、野澤 厳氏が率いるアルファジェン社がRNAiの医薬品への実用化に向けて精力的に活動されています。

 ▽アルファジェン社(トップページはちょっと重いかもしれません)
  http://www.alphagen.jp/

野澤社長はRNAi業界の動向を伝える「アルファジェン RNAi ニュース」というメールマガジンを定期的に発行しています。

RNAi業界やRNAi分野での新しい発見がコンパクトにまとまっているとても有益なメールマガジンです。

 ▽アルファジェン RNAi ニュース購読申し込み
  mailto:info@alphaGEN.jp

さて、

明日から3連休ですね。あまり天気が良くないようですが、皆さんよい休日を!清宮は多分働きます!(終)

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2006年09月24日

急性冠症候群の治療選択ではリスクの階層化が重要

急性冠症候群の管理において早期侵襲的治療と非侵襲的治療のどちらがよいのかはここ15年ぐらい議論の的になっていました。

なぜ議論になるかというと、データがないわけではなく、試験の結果が一貫していないからです。

全世界でこの15年で1万人以上が臨床試験に参加しています。TIMI IIIB1とICTUS試験では良い結果が得られず、VANQWISH試験では侵襲的治療の転帰の方が悪いという結果となっています。

これらの試験は、保存的な非侵襲的治療の方を支持するときにしばしば引き合いに出されます。

一方FRISC II、TACTICS-TIMI 18、RITA-3の試験結果はルーチンな侵襲的アプローチを支持するときによく言及されます。

試験デザインの違い、同時期の薬物療法の急速な進歩、血管再開通術技術の進歩等が試験毎に結果が違っている事におそらく寄与しているようです。

さて、

2006年9月16日のLancet誌には、FRISC IIの5年間の追跡調査結果が掲載されています。

 ▽非ST上昇型急性冠症候群患者に対する早期侵襲的治療の5年間の転帰
  http://www.biotoday.com/view.cfm?n=15076

全体では、死亡と心筋梗塞の発現率という点で、早期侵襲的治療の方が非侵襲的治療よりも優れているという結果となりました。

しかし死亡だけを見た場合、侵襲的治療と非侵襲的治療群で有意差は消失しました。

サブグループ解析の結果、FRISCリスクスコアで中〜高リスクであった患者において早期侵襲的治療のベネフィットがより強力に認められました。

一方、有意ではなかったものの、低リスク患者においては、侵襲的治療群の方が死亡や心筋梗塞の発現がより多いという結果となっています。

この結果は、既存のガイドライン(J Am Coll Cardiol 2002; 40: 1366-1374)と一致し、急性冠症候群の管理の決定においては臨床リスクの階層化がとても重要な要素となっていることを示唆しています。

結論として、今回の5年間のFRISC IIの結果は、中等度から高度のリスクを有する患者をターゲットにした侵襲的な治療は非ST上昇急性冠症候群患者の好ましい管理法であるという見解を補強していると言えそうです。(終)

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2006年09月14日

利尿薬、パーキンソン病治療薬、鎮静剤の併用で癌を治療

先日開始をお知らせした転職支援サービスに20名ほどの方からお申し込み頂きました。

研究者から経営者まで様々な分野の方からご応募いただいています。ありがとうございます。

バイオテクノロジー業界への皆さんの関心の高さを改めて感じています。

今後も日本のバイオベンチャーの動向を三井さんからいろいろお聞きし、みなさんにフィードバックしていきたいと思います。よろしくお願いします。

さて、

昨日登録した記事で一番興味深かったのは以下の記事です。

 ▽利尿薬、パーキンソン病治療薬、鎮静剤の併用で癌を治療
  http://www.biotoday.com/view.cfm?n=15006

具体的には、アミロリド、カルビドパ、フルマゼニルを投与すると神経内分泌癌が縮小することが確認されています。

様々な癌の遺伝子解析から、この治療法は神経内分泌癌以外にも効果を有する可能性が示唆されています。(終)

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2006年09月05日

Dementia Risk Score

9月のLancet Neurologyで紹介されているDementia Risk Scoreの具体的項目をワードファイルにまとめました。関心がある方は以下からダウンロードしてください。

▽Dementia Risk Score
http://www.biotoday.com/pdf/Dementia_Risk_Score.doc

参考文献
Risk score for the prediction of dementia risk in 20 years among middle aged people: a longitudinal, population-based study. Lancet Neurology 2006; 5:735-741

2006年09月03日

脳の微細構造の研究の意義

以下の研究で、

▽紡錘状顔領域は顔の認識だけをしているわけではない
http://www.biotoday.com/view.cfm?n=14852

著者等は以下のように結論していますが、

Overall, our approach provides a framework for understanding the fine-scale structure of neural representations in the human brain.

脳の微細環境を解析するよりも「どのようにして顔を認識する神経ができあがったのか?」や「その神経の顔認識メカニズム」を調べた方が面白いと思う。

たとえば顔を認識する神経はどこにあったって同じ機能をはたすだろうから、進化上、なにかの理由でたまたまFFAにあつまったというだけで、その場所を詳しく調べることは進化を研究している人にとっては面白いかもしれないけど、脳の機能や知能を調べている人にとってはさほど重要ではないと思う。

今回の研究がとても有意義なのは、顔に選択的に反応する領域が同定されたということであり、この領域の神経の仕組みと顔以外の物体を認知する神経の仕組みの違いを明らかにすると“親密さ”を振り分けるアルゴリズムとかが分かってくるんじゃないかと思いました。

おそらく、ヒトはヒトの顔によく触れるから顔を認識する神経が独立して発達したのであって、たとえば一切ヒトの顔を見ることなく毎日自動車を見て育った人はもしかしたら顔を認識する神経が車を認識する神経に置き換わるかもしれない。

たぶん、生きるうえで人間にとって顔の認識はとても大事なので、顔を認識することに特化した神経が出来上がったのではないかと思います。だから、この顔認識神経を調べると、大事な事を認識してその違いを把握する基盤が理解できるのではないかと思います。

もっと言うと、そもそもはFFAは物体認識領域であったのが、人はヒトの顔を見て判断・行動することがとても重要なので、物体認識神経回路の一部が強化されてヒトの顔の認識に特化するようになったのではないかと思います。

なので、顔認識神経とそれ以外の物体を認識する神経の機能の差を調べると「物体を見て重要度に応じて判断・行動する」ことの基盤となるアルゴリズムが見つかるのではないかと思いました。

そして、もしそんなアルゴリズムが見つかった場合、そのアルゴリズムは視覚だけでなく、その他の感覚にも共通である可能性が高いとも思います。

2006年08月29日

TGFβシグナルとマルファン症候群、Loeys-Dietz症候群

昨日のBioTodayニュースレターの前書きで、マルファン症候群ではTGFβシグナルの増強が動脈瘤の原因である可能性が高いが、Loeys-Dietz syndromeの動脈瘤についてはTGFβシグナルが亢進しているかどうかはまだはっきりとはしていないと紹介しました。

昨日の前書きはこちら→ http://report.biotoday.com/355.phpに掲載しています。

マルファン症候群でTGFβシグナルが増強していることは以下のマウス実験の報告で示唆されていますし、その他の動物実験でもTGFβシグナル増強が示唆されています。

 http://www.biotoday.com/view.cfm?n=12476

一方、マルファン症候群患者にTGFBR2変異が関与することを示した以下の報告では、

Heterozygous TGFBR2 mutations in Marfan syndrome. Nat Genet. 2004 Aug;36(8):855-60. Epub 2004 Jul 4.

TGFBR2に認められた変異は“機能喪失変異(loss-of-function)”であったことが示されています。

つまり、動物実験と臨床観察結果が一致していません。

マルファン症候群とオーバーラップする疾患・Loeys-Dietz症候群患者に認められたTGFBR1またはTGFBR2遺伝子の変異もloss-of-functionであったとの結果となっています。

A syndrome of altered cardiovascular, craniofacial, neurocognitive and skeletal development caused by mutations in TGFBR1 or TGFBR2. Nat Genet.2005 Mar;37(3):275-81. Epub 2005 Jan 30.

ただし、これらの変異をヘテロに持つ細胞はTGFβに対する反応性が障害されていませんでしたし、1人の患者では大動脈でのTGF-β活性は逆に亢進していることが確認されています。

つまり、Loeys-Dietz症候群でも、loss-of-function変異でありながら機能は障害されていない、または逆に機能が亢進しているという矛盾した知見が得られています。

以上、マルファン症候群やLoeys-Dietz症候群に関する動物実験の結果と臨床での知見を総合すると、キナーゼ活性を有するTGFβ受容体の遺伝子に認められた変異は、機能損失変異でありながらTGFβシグナリングは活性化しているのではないかと思います。

さて、分野は異なりますが、日周期に関する研究で、特定の変異は基質に応じて機能亢進となることもあれば機能損失にもなりうることが証明されています。

 ▽数学的モデル化により日周期タンパク質・カゼイン・キナーゼ遺伝子変異の反対の役割が明らかになった
  http://www.biotoday.com/view.cfm?n=14037

TGFβシグナリングについても、マルファン症候群やLoeys-Dietz症候群に認められたTGFβ受容体の機能損失変異は、特定の条件においてTGFβ受容体下流のTGFβシグナリング活性を亢進させている可能性があるのではないかと清宮は思っています。

そんな可能性を示唆する報告がありましたら、教えていただければ幸いです。このメールへの返信で清宮宛にメールが届きます。(終)

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  http://www.biotoday.com/reader_entry.cfm

 ▽神経工学投資ニュースレター2006年5月31日号 特集【パーキンソン病】を
  販売しています。パーキンソン病に関心がある方にはお勧めです。
  http://www.biotoday.com/SC/SC_group_itemlist.cfm?userid=biotoday

何がおきるかわからない

発癌物質の体内での挙動を考える上でとても重要な報告が発表されました。

http://www.biotoday.com/view.cfm?n=14760

ビスフェノールに限らず、他の物質でも同様な体内での増強メカニズムが存在するかもしれません。既存のメカニズムでは説明できないような現象があったら、深く調べていくと思わぬ重要な発見があることを改めて痛感。