急性冠症候群の治療選択ではリスクの階層化が重要
急性冠症候群の管理において早期侵襲的治療と非侵襲的治療のどちらがよいのかはここ15年ぐらい議論の的になっていました。
なぜ議論になるかというと、データがないわけではなく、試験の結果が一貫していないからです。
全世界でこの15年で1万人以上が臨床試験に参加しています。TIMI IIIB1とICTUS試験では良い結果が得られず、VANQWISH試験では侵襲的治療の転帰の方が悪いという結果となっています。
これらの試験は、保存的な非侵襲的治療の方を支持するときにしばしば引き合いに出されます。
一方FRISC II、TACTICS-TIMI 18、RITA-3の試験結果はルーチンな侵襲的アプローチを支持するときによく言及されます。
試験デザインの違い、同時期の薬物療法の急速な進歩、血管再開通術技術の進歩等が試験毎に結果が違っている事におそらく寄与しているようです。
さて、
2006年9月16日のLancet誌には、FRISC IIの5年間の追跡調査結果が掲載されています。
▽非ST上昇型急性冠症候群患者に対する早期侵襲的治療の5年間の転帰
http://www.biotoday.com/view.cfm?n=15076
全体では、死亡と心筋梗塞の発現率という点で、早期侵襲的治療の方が非侵襲的治療よりも優れているという結果となりました。
しかし死亡だけを見た場合、侵襲的治療と非侵襲的治療群で有意差は消失しました。
サブグループ解析の結果、FRISCリスクスコアで中〜高リスクであった患者において早期侵襲的治療のベネフィットがより強力に認められました。
一方、有意ではなかったものの、低リスク患者においては、侵襲的治療群の方が死亡や心筋梗塞の発現がより多いという結果となっています。
この結果は、既存のガイドライン(J Am Coll Cardiol 2002; 40: 1366-1374)と一致し、急性冠症候群の管理の決定においては臨床リスクの階層化がとても重要な要素となっていることを示唆しています。
結論として、今回の5年間のFRISC IIの結果は、中等度から高度のリスクを有する患者をターゲットにした侵襲的な治療は非ST上昇急性冠症候群患者の好ましい管理法であるという見解を補強していると言えそうです。(終)
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