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2006年02月28日

本日発行の医学誌にArch Intern Medが初登場

今日の「本日発行の医学誌」はArch Intern Medです。初登場!

今日のArch Intern Medの中で特に興味深かったのは、高齢男性に対するココアの効果と、高齢者における将来を楽観することの作用です。

“楽観”は、昨日まで解説してきたプラセボ効果と共通する要因があるのではないかと思います。

将来を楽観しつつ、ココアを飲んだりチョコレートを食べたりする。そんな生活をしている高齢男性は血圧が上がらず、心臓発作や脳卒中にもなりにくいようです。

2006年02月27日

プラセボはパーキンソン病患者のドパミン分泌を促進する

前回の前書きでお知らせしましたとおり、今日はパーキンソン病に対するプラセボの意外な効果についてお知らせします。引用文献はこのニュースレターの一番最後の部分に記しています。

◇パーキンソン病とは?

パーキンソン病の主な症状は運動障害です。この運動障害は、運動を司る黒質線条体のドパミンレベルが低下することが原因で生じます。


◇パーキンソン病の治療

したがって、低下したドパミンを補うために外部からドパミンと同じ作用を有する薬剤を投与することがパーキンソン病の治療ではとても効果的であり、そのような作用を有する薬剤が主流となっています。


◇プラセボは線条体のドパミン放出を促進する

外部から補充する代わりに、線条体からのドパミン放出を増加させることもパーキンソン病の治療法として有効です。

2001年8月のScience誌に発表された試験結果によると、プラセボはまさにこの作用を発揮するようです。

試験の結果から、プラセボに反応してパーキンソン病患者の線条体のドパミン放出が上昇すると示唆されました。

また、興味深いことに、プラセボで症状が良くなったパーキンソン病患者ほど線条体のドパミン放出のレベルが高くなっていると示唆されました。このことから、プラセボ効果と内因性のドパミンレベル上昇には“用量相関性”があると考えられました。


◇プラセボ作用を臨床でいかす

3回にわたってプラセボ作用を解説してきましたが、プラセボ作用の正体とは、「自ら生み出した希望への生体の反応」といえるのではないかと思います。

したがって、患者さんにプラセボ作用をおこさせるには、希望を持たせることが重要なのでしょう。

例えば、もしAという薬剤を服用している患者さんが、主治医から「最新の動物実験で、Aという薬には○○という画期的があることがわかったよ」と説明されたら、少なからぬ患者さんが前途に希望を持つのではないかと思います。

動物実験の結果自体を人にすぐに当てはめることは出来ませんが、その結果を伝えることで患者さんに希望が生まれ、状態が良くなるという可能性が期待できると感じました。

動物実験に限らずとも、気持ちを奮い立たせるような情報を提供することは、薬剤を投与することと同じぐらい重要なのかもしれません。


◇まず信頼でしょうか

昨年の12月に、男性癌患者さんのパートナーの方からメール頂きました。

私がこのニュースレターで紹介している最新の癌治療の開発動向を知ることで、闘病への気持ちを奮い立たせ、免疫力を高めていたという内容のメールです。

今回プラセボ効果について時間をとって調べてみて、彼の体内では癌に対する抵抗力が確かに高まっていたに違いないと思いました。

彼の場合には私のニュースレターが希望の糧になったわけですが、信頼するパートナーからの情報という前提があってはじめて私のニュースレターが希望の糧になりえたのだと思います。

信頼関係のない人からどんなに良い言葉をかけられても、どんなに良い情報が提供されてもそれはプラセボ効果へと昇華することはないでしょう。

まず信頼関係を築き、希望を育むコミュニケーションをする。そういったコミュニケーションが生体に物理的に作用して症状を改善しうることはプラセボの研究から十分に予想できるのではないかと思います。

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2006年02月25日

プラセボの実質的な効果

昨日の続きです(文中で引用した文献はこのニュースレターの最後の「前書きの引用文献」の欄に記しています。+αつきです)。

◇プラセボはどうやって鎮痛作用を発揮している?


プラセボが体にどんな影響を与えて鎮痛作用を発揮しているかを調べた報告が2004年2月のScience誌(以下、Science報告)に発表されています(1)。


この報告には、視床、島、前帯状皮質等の痛み感受性脳領域の活動の低下とプラセボによる鎮痛作用が相関したという実験結果が紹介されています。


また、プラセボ使用すると、痛みの予知段階において前頭前野の活動が上昇することが分かりました。


この結果から、プラセボは体に物理的な作用を及ぼさずとも、脳の活動を変化させることで、痛みの感じ方に影響を与えうることが証明されました。

◇Science報告とは異なる結果も発表されている


Science報告と同様な実験をしたものの、Science報告とは異なる結果が得られたという報告が最近のJ Neurosci誌に発表されています(2)。


したがって現時点では、Science報告が完全に正しいとはいえないようです。


ただし、ScienceとJ Neurosciの報告から、プラセボが脳の神経活動に影響を与えるということは確実にいえそうです。


J Neurosci誌の著者等は、実験の結果から以下のように結論しています。


「placebo analgesia may be configured through multiple brain pathways and mechanisms(複数の脳経路・メカニズムを介してプラセボによる鎮痛作用が生じる)」


この複数の経路やメカニズムを一つずつ読み解いていくことで、プラセボ効果の本性が明らかになるでしょう。


そしてプラセボ効果の本性を探ることで、新しい鎮痛剤が開発できる可能性があります。


プラセボ効果に関する研究が進展することを期待したいと思います。


以上、今日の前書きでした。


さて、次回(来週月曜日)の前書きでは、プラセボとパーキンソン病の意外な関係を明らかにした報告を紹介します。


お楽しみに!

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(1)Placebo-induced changes in FMRI in the anticipation and experience of pain. Science. 2004 Feb 20;303(5661):1162-7.

(2)Brain Activity Associated with Expectancy-Enhanced Placebo Analgesiaas Measured by Functional Magnetic Resonance Imaging. The Journal of Neuroscience, January 11, 2006, 26(2):381-388

◇その他の研究

このほかにも、痛覚に対するプラセボの影響を調べた報告はけっこうあります。


例えば、2002年のScience誌には、プラセボとオピオイドによる鎮痛作用が共通の神経ネットワークに影響を与えることを示唆した報告が発表されています(3)。


最近では、1月11日のJ Neurosci誌にプラセボは脊髄の痛覚処理に変化を与えるという実験結果が発表されています(4)。


(3)Placebo and opioid analgesia-- imaging a shared neuronal network. Science. 2002 Mar 1;295(5560):1737-40. Epub 2002 Feb 7.

(4)Placebo-Induced Changes in Spinal Cord Pain Processing. The Journal of Neuroscience, January 11, 2006, 26(2):559-563;

2006年02月24日

プラセボの効果

◇プラセボでの反応率高し

日本ではあまり取り上げられていないようですが、昨日のNEJM速報でも取り上げた膝の変形性関節症の痛みに対するグルコサミンとコンドロイチンの大規模臨床試験の結果が海外のメディアでは大々的にとりあげられています。


この試験では、プラセボ服用で疼痛が緩和した人が60%もいました。


◇鎮痛作用と期待感

なぜこのように多数の人がプラセボで痛みが和らいだかというと、プラセボを服用することで「痛みが緩和するのではないか」という期待感が生まれ、この期待感が鎮痛作用をもたらしたと考えられます。


今回のグルコサミンとコンドロイチンの大規模試験結果は、「痛み」がいかに「気持ち」に左右されやすいかを示す良い例でしょう。


◇プラセボで痛みが和らぐメカニズム

市販されている鎮痛剤は、体内のどこかの部位に物理的な作用を及ぼし、その結果痛みを緩和させます。


ではプラセボで生じる「これを飲めば痛みが和らぐ」という期待感はどんな作用を人体に及ぼして鎮痛効果を発揮しているのか?


これを調べた報告が2004年のScience誌に発表されています。既にご存知の方も多いかと思いますが、明日の前書きではその報告を紹介します。


また、痛みとは異なりますが、パーキンソン病にプラセボを投与したときに認められる意外な効果についても明日、または来週の前書きで紹介します。

お楽しみに!

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2006年02月23日

ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした

最初に、長時間BioToday.comへのアクセスが不通となり、大変申し訳ありませんでした。

現在はアクセスできるようになっています。

今回のトラブルを契機にしてより安定運営が望めるサーバーに鞍替えしました。

今後はより安定したサーバー環境でBioToday.comを運営していきます。

さて、

本日、除虫作用がある分泌物を出すカエルがオーストラリアで見つかったというニュースを紹介しています。

先日は抗HIV作用を有する物質が両生類から見つかったというニュースを紹介しました。

カエルに限らず、自然界にはまだまだ未知の有益な物質が存在するようです。

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2006年02月22日

Synta(シンタ)社の上級副社長・古屋氏のインタビューが遅れます

Synta(シンタ)社の上級副社長・古屋氏のインタビューについて3点お知らせがあります。

【1】配信が遅れます。

Synta社の上級副社長・古屋氏のインタビューの第一回目を本日配信する予定でしたが(http://report.biotoday.com/251.php)、インタビューの掲載時期を延期いたします。

インタビューの質問原稿の作成が遅れてしまったことが配信が遅れた理由です。

ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません。

既にインタビューの質問原稿は古屋氏に送信しており、インタビューのプロセス自体は進行中です。出来る限り早期にインタビューの第一弾を配信したいと思います。

【2】古屋氏のインタビューを掲載したニュースレターは日曜に配信します

古屋氏のインタビューは、BioTodayニュースレターの増刊号として、日曜日に配信していきたいと思います。

当初は前書きで紹介していく予定でしたが、前書きとしてはボリュームがありすぎるのと、コンテンツとして独立させた方がより読みやすくなると考え、単独配信に変更しました。

インタビューの第一弾の開始がいつになるかは今のところ未定です。出来る限り来週の日曜日には第一弾が発行できるように進めていきます。

【3】古屋氏のインタビューの内容

現時点では以下のような項目で構成される予定です。

  1.古屋様の紹介
  2.シンタ社創設の経緯
  3.シンタ社のパイプライン
  4.STA-5326の開発について

順番が多少前後したり、新たな項目が加わったりする可能性があります。その点はご了承ください。

Synta社にかける古屋氏の思いが伝わり、かつSynta社の今後の戦略が明らかになるようなインタビューにしたいと思います。お楽しみに!

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ファイザー社会長兼CEOハンク・マッキンネル氏の著書の日本語版が出版された

◇期待の抗肥満薬・Acomplia(Rimonabant)に対してFDAから承認見込みが通知されました。最終承認に必要な要件が明らかになっておらず、どの程度の情報が要求されているのかは不明です。

続報が入りましたらお知らせします。

◇ファイザー社会長兼CEOハンク・マッキンネル氏の著書の日本語版が昨日出版されました。

 ▽ファイザーCEOが語る 未来との約束

 ▽原題:A Call to Action

製薬業界のトップの頭の中を知ることができます。すなわち、この本を読めば、製薬業界の方向性が把握できるようになるでしょう。

マッキンネル氏は以下のことを繰り返し主張しています。

 ・米国を始めどの国においても現在真の「ヘルスケア」制度は存在しない。
 ・なぜなら、病気にかかって初めて有効になる「シックケア」の制度しか存在しないからだ。
 ・真のヘルスケアを確立するには、医療へのアクセスを制限したり、医療費をやみくもに抑制することではなく、「健康を守ることへの投資」こそが必要だ。
 ・これを実現するには、予防、教育や早期診断・早期治療に重点を置く必要がある。

なぜ業界トップのCEOが早期診断・治療に重きを置くのか?そのメリットとは?

具体的な事例を交えて、よりよいヘルスケア制度の実現に向けた数々の提案をしています。

ビジネスは社会のニーズに応えるべく成長していくべきだと思います。その点で彼は正しい視点を持っていると思います。

また、このような本を出版してその考えを明らかにしておくことは一般消費者に対して真摯な態度だと感じました。

 ▽ファイザーCEOが語る 未来との約束

 ▽原題:A Call to Action

2006年02月20日

アミロイド斑に群がるマイクログリア

先日の注目記事で骨髄由来のマイクログリア細胞が脳のアミロイド斑を除去する作用があるという報告を紹介しました。

その報告のSupplementalデータとして、マイクログリアがアミロイド斑に浸潤している様子が立体カラー映像で提供されています。

 ▽Microglial Cells Surround and Infiltrate Amyloid Plaques

百“読”は一見にしかず、非常に分かりやすいです。獲物に群がるアリのような感じでマイクログリアがアミロイド斑を囲んでいます。

今後は、このマイクログリアがアルツハイマー病の発現や予防に実際に関与しているのかどうかを調べられていく予定です。

もし関与しているとすれば、このマイクログリアの働きを増強する薬剤はアルツハイマー病の画期的な治療薬になでしょう。

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2006年02月18日

次世代の抗貧血薬

昨日の続きです。

Hematideですが、Affymax社のホームページを開くと、

 ▽Affymetrixホームページ

トップページにリード開発品としてHematideが紹介されており、期待の大きさがうかがえます。

Hematideのルーツとなる研究は1996年6月のScience誌に発表されました。

 ▽Small peptides as potent mimetics of the protein hormone erythropoietin. Science. 1996 Jul 26;273(5274):458-64.

この研究では、ランダムファージディスプレイ法を用いて、エリスロポエチン(EPO)受容体に結合してこれを活性化する14アミノ酸のペプチドを同定することに成功しています。

Hematideはこの研究を土台にして誕生しました。

Hematideには以下のような利点があります。

◇効果が1ヶ月以上持続する

Hematideはペプチドをペグ化してあり、第1相試験の結果から、1回の注射で赤血球を上昇させる効果が4週間以上持続することが確認されています。

◇赤芽球癆患者にも投与可能

稀ながら、Hematideではなく、組み換えEPOの投与で赤芽球癆(Pure Red Cell Aplasia)という重篤な副作用がおきることがあります。

赤芽球癆は、EPOに対する抗体が原因で赤血球の形成が低下する病態です。

EPOとHematideのアミノ酸は全然違いますので、EPOに対する抗体はHematideに交差反応しないことが分かっています。

したがって、赤芽球癆の患者にもHematideは使用できると考えられます。また、Hematideが赤芽球癆を起こすことはないと考えられます。

赤芽球癆の患者にとってはHematideは非常に有用な薬剤となるでしょう。

◇免疫原性が低い

Hematideに対する免疫原性は低く、自己抗体が出来てHematideが効きにくくなるという可能性も低いようです。

昨日のメールではAmgen社やJ&J社が開発パートナーになる可能性を示唆しましたが、最近、日本の武田薬品が早々とAffymax社と提携を結びました。

 ▽Affymax社と武田薬品 日本でのHematideの開発で提携

今後は提携の話が活発になっていくでしょう。第2相試験が終了した段階でAmgen社とJ&J社がどんな対応をとるか非常に関心があります。またRoche社もからんでくる可能性もありますし、これまで貧血市場には縁がなかったビッグファーマが提携を求めてくるかもしれません。

この辺の動きにはアンテナを張っておこうと思います。

以上、Affymax社のHematideについてでした。

【参考】

Affymax社はHematide以外にもインターロイキンなどのペプチド類似薬を同定しています。

Hematideの研究成果も含め、これまでの学会発表や文献データが以下一覧となって表示されています。

学会発表のポスターなどもダウンロードできてとても便利です。関心のある方はどうぞ。

 ▽Abstracts and Publications

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2006年02月17日

コンピューターだけでなく、薬品開発でもバックアップが重要

昨日のSynta社の古屋様からのコメントはいかがでしたか?

以下に、古屋様の写真入りで昨日のコメントをまとめています。ぜひご覧下さ
い。

 ▽Synta社の上級副社長・古屋圭三様からのメッセージ

さて、昨日の続きです。

Amgen社がEpogenに続いてAranespというバックアップ製品を開発できたのに対し、J&J社はProcritに続く製品を開発できませんでした。

ただ、何もしなかったわけではありません。

かつては、ドラッグデリバリーの会社・Alkermes社と提携してProcritの持続製剤を開発していました。

しかし1998年1月から始まったこの提携は2000年6月に突然打切られてしまいます。提携解消の具体的な理由は説明されていません。

 ▽Johnson & Johnson to Terminate Further Development of Injectable Sustained Release Formulation of Erythropoietin

その後どうするのかなと思っていたら、Alkermes社との提携を解消した翌年に、J&J社はデポ技術保有しているALZA社を2001年に買収します。

当時私はこのALZAMER技術を用いて持続型エリスロポエチンを開発するんだろうと思っていました。

しかし、その後、J&J社がALZA社のデポ技術を用いて持続型のエリスロポエチンを開発するというニュースは発表されませんでした。

そんな感じで、

J&J社は、Procritのバックアップ製品の開発でAmgen社に遅れをとり、Aranespの発売後はProcritのシェアはじりじり縮小していっています。

このままでいいのかJ&J?おそらくどうでもよいはずが無いでしょう。


ところで、

Amgen社やJ&J社の貧血薬はエリスロポエチンそのものをベースにしていますが、エリスロポエチンとは全く異なる一風変わった貧血治療物質が存在します。

それは、Affymax社のHematideという造血ペプチドです。

Hematideのアミノ酸配列はEPO(エリスロポイエチン)とは全く関係ないのに、不思議なことに造血作用を発揮します。

戻ってJ&J社ですが、

彼等が現在の貧血市場でのシェア縮小を放っておくとは考えにくいです。おそらくバイオベンチャーが開発中の次世代の貧血治療薬をProcritのバックアップにひっぱってくるように思います。

その場合、Affymax社のHematideはProcritの候補の一つかもしれません。または、昨日、CEOの交代が発表されたNeose社の糖/ペグ化エリスロポエチン・NE-180等もバックアップとして相応しいでしょう。

Hematideは第2相試験中でNE-180は第1相試験中。今後提携の動きがあるかもしれません。注目していきたいと思います。

特にHematideの臨床開発は、J&J社だけでなくおそらくAmgen社も注目しているでしょう。

以上、今日の前書きでした。

明日は、Affymax社の不思議な造血ペプチド・Hematideの開発の歴史を簡単に紹介したいと思います。

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Synta社の上級副社長・古屋圭三様からのメッセージ

Johnson & Johnson社が貧血治療薬・Procrit(エリスロポエチン)の営業人員を縮小するようです。

Amgen社がEpogenに続いてAranespというバックアップ製品を開発できたのに対し、J&J社はProcritの続くバックアップを開発できませんでした。

それがJ&J社の貧血事業が廃れ行く大きな原因だと思います。明日の前書きでこのへんを少しまとめたいと思います。

さて、

昨日お知らせしましたように、今日は、米国のバイオベンチャー・Synta社の薬剤開発部門で上級副社長をされている古屋圭三様からのメッセージを紹介します。

古屋氏は、BioTodayの有料会員様です。会員登録の手続きについてメールをやりとりしている時にSynta社の上級副社長であることを知りました。

Synta社のシニアマネージメントは12人で構成されていますが、その中でただ一人の日本人です。しかも社長に次ぐ重要ポストで研究開発を指揮しています。


この事実を知ったときに、古屋様のことがとても知りたくなりました。


米国バイオテック業界の熾烈な競争の中で、Synta社の薬品開発を統括する立場として古屋様がどう考え、どう行動しているのか?がとても知りたくなったのです。


そこで早速、

メールでのインタビューを申し込んだところ、快諾して頂き、以下のようなコメントを頂きました。


> インタヴューの件、ありがとうございます。
> (自身の経験を伝えることで)日本の医薬研究開発に携っている多くの優秀な
> 人たちに、夢と希望とグローバルな視点をもっていただけたらと思います。

熱い方です。

いくらネットで情報が瞬時に入ってきても、それは表面的なことであって、なかなかアメリカのバイオテックで働く人々の“ハート”や“熱気”は伝わってきません。

すなわち、アメリカのバイオテックの住人が実際にどう思い、どう活動しているのかはなかなか日本には伝わってきません。

今後数回にわたって、古屋氏のインタビューを掲載していこうと思います。

古屋様へのインタビューを通じて、古屋氏自身の熱気と共に、古屋氏自身をとりまくアメリカのバイオテックの住人の熱気が伝えられたらと思います。

まず今日は、プロローグとして、BioTodayへのコメントと、Synta社の事業内容の解説と将来の展望について古屋氏に語って頂きます。

それではプロローグの始まり。


[ここから古屋様のコメント]----------------

◇BioToday.comの活用法について

新鮮な正しい情報を的確に把握し、より意義のある新薬研究開発に活かすことは、このグローバルに激動する医薬研究開発および医薬ビジネスにおいては必要不可欠です。

私は、常に複数の欧米の無料のウェブニュースを利用し、さらに有料ニュースレター、有料の医薬データベースのオートサーチ等を利用していますが、多角的な情報収集において、BioTodayは重要な役割を果たしています。

役に立つ情報を、業界情報とサイエンテフィック情報両面から、網羅的に、しかも的確かつ簡潔に紹介していただいており、有効に使わせていただいています。

◇Synta社について

Synta Pharmaceuticals Corp は、100パーセント米国の新規製薬ベンチャー企業として、2002年の秋に創設されました。その後3年で、200億円以上の非VC(ベンチャーキャピタル)資金を集め、未上場のバイオテックとしての記録を塗り替えたばかりでなく、3つの新薬候補を臨床試験に進め、充実したパイプラインを創り続けています。

ユニークな化合物ライブラリーおよび効率的かつ機動的なディスカバリーエンジン、さらにアグレッシブな臨床開発の機能、それらが効率よくインテグレートされた機動力のある会社です。

アメリカバイオテック界においても、非常に稀な、高度なサイエンス、機動力、豊富な資金、人材・組織を有した、ターボチャージのミニ製薬研究開発会社です。

ピカ新とも言うべき経口の特異的IL-12/23阻害剤(anti-autoimmune)がPhase2b(Crohn's disease)にあり、RAのPoC Phase 2aも開始しました。

また、新規のHsp70インドューサー(NKアクティベーター)をTaxane Enhancerとして開発しており、メラノーマでのPhase 2bを実施しています。

パイプラインも、制癌剤関係では、世界最強かつユニークなHsp90 inhibitorや癌血管阻害剤が前臨床段階です。

免疫薬関係では、免疫細胞に特異的な新規CRAC(カルシウムチャンネル)の選択的かつ強力な阻害剤を開発しており、自己免疫疾患のみならず、喘息やアレルギーなどへの展開も図っています。

今後、Synta社からのエキサイティングなニュースをお届けできるものを思います。

今後とも、引き続き、更に有効なBioTodayからの情報の提供を期待しています。

-------------------------[ここまで古屋様のコメント]

いかがでしたか?熱い方であることが文章の端々に滲み出ているでしょう。

このような熱心でバイタリティーのある方がBioToday.comの会員であることをとても誇りに思います。

次回からは、古屋氏がSynta社の上級副社長になるまでの経緯と現在の活動、将来の展望、日本のバイオ産業に寄せる思いなどを熱く語って頂きたいと思います。


ところで、

バイオテック業界人へのインタビューはBioTodayにとっては初の試みです。

続くのか?続けられるのか?という一抹の不安はあるものの、実は、BioToday.comの目玉コンテンツとしてこのような「バイオ業界人インタビュー」を継続的に実施していきたいと思っています。

もし「俺の会社、または俺をインタビューしてくれ」という方がいましたらお知らせ下さい。私の方からもメールさせて頂きます。


そんなわけで、バイオ業界人インタビューの栄えある(?)トップバッターは古屋氏となりました。

古屋氏インタビューの第1回目は来週水曜日頃に配信する予定です。

お楽しみに!

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2006年02月16日

JAMA Vol. 295 No. 7, pp. 723-850, February 15, 2006

2006年2月15日のJAMA誌です。

Effect of Rimonabant, a Cannabinoid-1 Receptor Blocker, on Weight and Cardiometabolic Risk Factors in Overweight or Obese Patients: RIO-North America: A Randomized Controlled Trial
JAMA 2006;295 761-775

太り過ぎまたは肥満患者を対象にして、体重と心血管代謝リスクファクターに対するカンナビノイド-1受容体ブロッカー・Rimonabantの効果を調べた報告

結果:2年間、Rimonabantの体重抑制作用は持続し、ウェストが縮んだ。また心血管代謝リスクファクターも改善した。

Body Weight and Mortality Among Men and Women in China
JAMA 2006;295 776-783

中国の弾性と女性の体重と死亡率

結果:太り過ぎも低体重も死亡の上昇と関連した。

Association of Socioeconomic Status With Functional Capacity, Heart Rate Recovery, and All-Cause Mortality
JAMA 2006;295 784-792

社会・経済的地位(SES)と機能的能力、心拍回復、死亡の関係

結果:低SESと機能的能力障害、心拍回復障害が強く相関した。またSESが低下するにつれて死亡リスクが上昇した。

Intravenous Morphine and Topical Tetracaine for Treatment of Pain in Preterm Neonates Undergoing Central Line Placement
JAMA 2006;295 793-800

Central Line Placementを受ける早産児を対象にして静注モルヒネと局部テトラカインの鎮痛作用を検討

結果:モルヒネまたはモルヒネとテトラカイン併用の方がテトラカイン単独よりも鎮痛効果が優れている。ただしモルヒネは呼吸抑制、テトラカインは紅斑を引き起こす。

Development and Validation of a Prognostic Index for 4-Year Mortality in Older Adults
JAMA 2006;295 801-808

高齢者における4年間死亡率を評価する予後インデックスの開発と妥当性検証

結果:年齢、性別、自己評価した合併症、機能評価を組み込んだ予後インデックスは、死亡リスク別に高齢者を明確に区別することができる。

抗肥満薬・Rimonabantは抗肥満薬ではない

今日発行のJAMA誌に、Sanofi-Aventis社が開発中の抗肥満薬・Rimonabantの2年間の臨床試験成績が発表されています。

Rimonabant高用量投与群での1年目の体重低下量は6.2kgとたいしたことありません。しかも、1年目でRimonabantを服用をやめると、2年目に体重がリバウンドするという結果となっています。

このように、抗肥満薬として期待されているRimonabantの体重低下作用は実はたいしたことありません。

しかし、

体重低下作用はたいしたことがないのですが、今回発表された試験でも明らかなように、Rimonabantは心血管代謝リスクファクターを良好に変化させる作用があります。

すなわち、Rimonabantを服用し続けると糖尿病患者の血糖コントロールを良好に保てたり、高リスク患者の2型糖尿病、脳卒中、心臓発作といった心血管疾患を予防できる可能性があります。

したがって、ほんの僅かの体重低下作用ではなく、より効果が明確で重要度も高い“心血管代謝疾患予防薬”としての側面を強く打ち出した方がこの薬剤は成功するでしょう。

実際、

ClinicalTrials.govで確認したところ、2型糖尿病患者を対象にしたRimonabantの第3相試験が2006年1月に始まっています。

また、心血管リスクファクターを有する肥満患者を対象にして、Rimonabantの脳卒中、心臓発作の予防作用を調べる第3相試験が去年の12月に始まっています。

この2つの試験でポジティブな結果が得られ、心血管代謝疾患の予防薬という効能が得られれば、Rimonabantは莫大な売上げを上げることができるでしょう。

多くのアナリストのRimonabantのピーク売上げ予想は30億ドルです。強気のアナリストは50億ドルを超えると予想しています。

もし心血管疾患の予防という適応と糖尿病患者の血糖コントロール改善という適応がとれて安全性に問題がなければ、Rimonabantの売上げは、Pfizer社のLipitorぐらいは達成できるのではないかと私は思います。

Pfizer社の予想では、2006年のLipitorの売上げは130億ドルを超えるとのことです。

今後は体重低下作用以外のRimonabantの効果を示す臨床試験結果が発表されるようになります。

その結果を見れば、この薬剤がどれほどのブロックバスターになるかが見えてくるでしょう。この薬剤の実力の見せ所はこれからです。
 

 ▽神経工学投資ニュースレター 2005年10月31日号 特集:肥満
 現在の肥満治療を取り巻く状況や抗肥満薬の開発の歴史と展望をイメージすることができます。

明日の前書きでは、米国のバイオベンチャー・Synta社で副社長として活躍されている古屋圭三様からのメッセージを紹介します。

明日の前書きは必見です。お楽しみに!!


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 ▽神経工学投資ニュースレター 2006年1月31日号 特集:睡眠傷害も好評発売中

2006年02月14日

タバコ会社のマーケティング

「タバコなんざ、ガキや貧乏人に黒人、あとはバカに吸わせておけ(悪魔のマーケティング)からの引用」というスタンスでマーケティングを実行してきたタバコ業界ですが、その本質は今も変わっていないようです。

最新のLancet誌にはタバコ会社の内部資料のレビュー報告が掲載されています。(注目の記事参照)。Lancet誌には、人の行動様式を逆手にとったある種洗練されたタバコ会社のマーケティング戦略が紹介されています。

タバコ会社は、もっと人様に感謝されるような戦略をとって生きる道を探ってもらいたいです。とても難しいと思いますが、それはタバコ会社の使命でしょう。

さて、

タバコ会社の悪巧みが水面下で進行する一方、個人レベルで悪いことをした研究者に裁定が下されています。

韓国の幹細胞問題の中心人物、ファン教授とその他6人の研究者がソウル大学から解雇されることがほぼ決定しました。

ファン教授は卵子提供の強要や研究寄付金の不正使用などで刑事責任も追及されており、今後徐々に彼の悪さが暴かれていくでしょう。

一方、ピッツバーグ大学の調査委員会が、ファン教授の報告に共同著者として名を連ねるシャッテン教授に関する調査報告書をピッツバーグ大学に提出しています。

その報告の中で、ピッツバーグ大学の調査団はシャッテン教授は捏造には関与していなかったと結論しています。

シャッテン教授は今後もピッツバーグ大学でこれまで通り研究を実施できるとのことです。

幹細胞スキャンダルをめぐる対照的なニュースでした。

ところで、

研究成果を捏造してしまう研究者が一番悪いですが、その成果を簡単に掲載してしまう科学誌にも少しは責任があるかもしれません。

Vioxxの裁判で、Merck社は、NEJM誌に発表されたVioxxの試験成績を根拠にしてVioxx服用18ヶ月を超えると脳卒中や心臓発作のリスクが上昇するとと主張しています。

NEJM誌のトップエディターの一人が、Merck社のNEJM報告の使い方が気に入らないとして、NEJM報告には問題があるという証言をしています。

彼は、18ヶ月を超えると心臓発作や脳卒中のリスクが高くなるというのはあくまでも仮説という位置づけなのに、あたかも自明の事実であるような扱いをしていることに異を唱えています。

このエディターによると、NEJM報告の審査途中で仮説であることを明記するように訂正を依頼したのに、訂正は結局されなかったとのことです。

ただ、いくら議論の内容を今頃持ち出したとしても、既に掲載してしまっているので、NEJM誌は文献の内容を了承したことになるのではないでしょうか?

なので、今頃当時の議論をぶり返しても、いまいち説得力に欠けます。

本当に必要なら、訂正するまで掲載を許可しないというような強い姿勢が必要なんだと思います。

証言を信じれば、NEJMは結局妥協して掲載してしまったわけですので、レビューってそんなもんなの?って思われても仕方が無いかなあと。

NEJM誌のエディターの証言は、科学誌のレビューのいい加減さを浮き彫りにしてしまっているように思えてなりません。

なお、

現在ニューオーリンズで開催されているVioxxの裁判では、どの程度の期間Voxxを服用すると心臓発作や脳卒中がおきるのか?が焦点となっています。

原告の弁護士・Andy Birchfield氏は、Vioxxが死亡の原因であり、製造元であるMerck社が薬剤の危険を隠していたことを証明してみせると陪審に告げています。

Birchfield氏のまず最初の武器はNEJM誌のエディターの証言だと思いますが、かなり強気のようですので、他にもなにか有力な情報をつかんでいるのかもしれません。

2006年02月11日

両生類の皮膚からエイズ特効薬

今日の医学ニュースで、ウイルスの膜に作用してHIV感染を防ぐ物質について紹介していますが、この研究を実施したバンダービルト大学のDerya Unutmaz助教授は以下のような研究も実施しています。

Antimicrobial Peptides from Amphibian Skin Potently Inhibit Human Immunodeficiency Virus Infection and Transfer of Virus from Dendritic Cells to T Cells. Journal of Virology, September 2005, p. 11598-11606, Vol. 79, No. 18

様々な両生類の皮膚から得られた14種類のペプチドの抗HIV作用を調べた報告です。

これらのペプチドのうちの3つはT細胞へのHIV感染を完全にブロックし、しかも樹状細胞に隠れているHIVウイルスを破壊する作用がありました。

以前、

カエルを含めた両生類が地球上から姿を消しつつあるという記事を紹介しましたが、

Unutmaz助教授の研究成果から、両生類が減るということは、HIVなどの治療が難しい病気の特効薬が生まれる可能性を狭めているのだということがよくわかります。

両生類に限らず、天然の生き物や植物は我々人間が病気と戦う時の武器となりえます。

アメリカを代表する民族植物学者 マーク・プロトキン氏は、著書「メディシン・クエスト」の最後をこう締めくくっています。

「(天然の動植物)と共存し、彼等から恩恵を受ける方法を探す作業は、美的な吸引力には欠けるけれども、われわれ自身の利益のために、言葉につくせないほど大切な仕事だ。

われわれとこの惑星を共用している生き物たちとの関係を、もっとうまくこなせたら、きっと明るい未来がくる。」

今回紹介したUnutmaz助教授の研究成果などを大々的にプレスがとりあげたりすると、天然の動植物がいかに人類の健康に大事かを大衆も認識するようになるでしょう。

ただし、ただでさえ科学記事が貧弱な日本のメディアが、今回のような研究成果を自ら取り上げるとは考えにくいのです。

なので、力をもった環境保護団体等は、自然が持つ偉大な力を端的に表す研究成果を掲載するように大手メディアに対してプッシュすることも必要だと思います。

そういった知的に洗練された圧力やロビー活動は、長期的な視点で非常に有用な筈です。

2006年02月09日

NEJM Volume 354 February 9, 2006 Number 6

2006年2月9日のNEJM誌のOriginal Articleの4報のタイトルです。

Saw Palmetto for Benign Prostatic Hyperplasia

良性前立腺過形成に対するノコギリパルメット→効果なし

Radiotherapy plus Cetuximab for Squamous-Cell Carcinoma of the Head and Neck

頭頸部のへん平上皮細胞癌に対する放射線療法+Cetuximab

Selective Serotonin-Reuptake Inhibitors and Risk of Persistent Pulmonary Hypertension of the Newborn

新生児における、持続性肺高血圧のリスクと母親のSSRI使用→関連あり

NXY-059 for Acute Ischemic Stroke

急性虚血性脳卒中に対するNXY-059→6時間以内に投与すると90日以内の身体障害が減少する

2006年02月08日

JAMA 8 February 2006; Vol. 295, No. 6

2006年2月8日発行のJAMA誌タイトルとちょっとした結論+どうでも良い感想です。

Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Invasive Breast Cancer: The Women's Health Initiative Randomized Controlled Dietary Modification Trial. JAMA 2006;295 629-642

浸潤性乳癌のリスクと低脂肪食の関係。

結果:平均8.1年のフォローアップで、低脂肪食は浸潤性乳癌のリスクを有意に低下させるという結果は得られなかった。ただ、リスクを減らす傾向は認められた。


Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Colorectal Cancer: The Women's Health Initiative Randomized Controlled Dietary Modification Trial. JAMA 2006;295 643-654

結腸直腸癌のリスクと低脂肪食:Women's Health Initiativeより

結果:低脂肪食に結腸直腸癌のリスクを有意に減らす作用なし。


Low-Fat Dietary Pattern and Risk of Cardiovascular Disease: The Women's Health Initiative Randomized Controlled Dietary Modification Trial. JAMA 2006;295 655-666

低脂肪食と心血管疾患のリスク:Women's Health Initiativeより

結果:閉経後女性において、脂肪摂取量を抑えて果物、野菜、穀物の摂取量を増やしても冠疾患、脳卒中、 冠疾患と脳卒中(CVD)のリスクは低下しなかった。


Transition of Extremely Low-Birth-Weight Infants From Adolescence to Young Adulthood: Comparison With Normal Birth-Weight Controls. JAMA 2006;295 667-675
 
超低体重の幼児の青年から若い成人への移行。正常出産時との比較。
 
結果:超低体重の幼児の多くは、若い成人に移行するにつれて人生初期に被った数々の困難を乗り越えていく。

感想:いいですねこの論文。結論のovercomeという動詞に著者の気持ちが込められているように思いました。ゴダイゴの銀河鉄道999の主題歌が頭の中でリフレインしています。


Comparison of Two Methods to Detect Publication Bias in Meta-analysis. JAMA 2006;295 676-680

 メタ解析における出版バイアスを検出する2つの方法の比較

 感想:メタ解析する人は必読かと思います。

コミュニケーションの滝登り

昨日(http://report.biotoday.com/236.php)の続きですが、以前紹介したエーザイのお客様相談窓口は1年間休まず365日電話を受け付けており、社会とのコミュニケーションを積極的に図っています。

そして、そのコミュニケーションは、製品改良に活かされており、どう活かされているかを以下のページで紹介しています。

 ▽お客様の声から

企業PRで得た情報を製品開発に活かして、その成果を公表して企業の取り組みを顧客に知らせる。こうすることで、顧客は更に質の高い問いかけができるようになり、一つ上の次元のコミュニケーションが出来るようになるんだと思います。

バイオトゥデイもこんな会社になれるように精進したいと思います。

2006年02月07日

企業PRのあるべき姿

ちょっと古いですが、2005年12月5日の日経ビジネスに、米バーソン・マーステラの創業者にして会長のハロルド・バーソン氏の企業PRに関する見解が掲載されています。

彼が考える企業PRのあるべき姿はライフサイエンス業界では特に重要と思いましたので、以下に紹介いたします(「」は日経ビジネスからの抜粋です)。

バーソン氏は、企業PRとは公益に寄与し、企業と社会の関係を良くすることを目的としたもので、単なるマスコミ対策ではないと主張しています。

なぜ企業PRが公益に寄与するのかというと「企業は、社会の中の重要な仕組みであり、良きことをして、それに見合った報酬を受け取る良き企業であるには、正しい行動・行為を選び、その行動・行為の意義を顧客や社会にきちんと伝えな」ければならないからです。

つまり社会の仕組みの一部であるのだから、企業は活動内容やその結果どうなったかを企業PRを通じて社会に伝え、社会と意思疎通を図る義務があるのです。

「社会との意思疎通では、先手を打って、企業や組織の方からアジェンダ(議題)を出す努力が求められます。企業が新しいことに取り組む場合、報酬とリスクの両面が必ずつきまといます。この両面を大衆に理解してもらう努力をする。何かが起きてから慌てて対処するのではなく、事前に予防しておくのです。」

“企業の活動によって生じる報酬とリスクを大衆に理解してもらう努力をする”これはまさにライフサイエンス業界のためにあるような言葉だと思いました。

大衆のボランティアなくして薬は開発できません。しかし発売前の安全かどうかが分からない薬を服用することには多大なリスクが伴います。つまり薬は、開発段階で人を死なせるかもれないリスクを孕んでいるのです。しかし、なぜそんなリスクがあると知りつつ開発されるかといえば、いうまでもなく、薬の開発に成功すれば人類の健康に計り知れない恩恵(報酬)をもたらしえるからです。

リスクと報酬を大衆に知らせ、理解してもらい、意思疎通を図るにはどうしたら良いか?それを第一に考えれば、どんな企業PR活動をしたら良いのかが自ずと分かってくるのではないかと感じました。

バーソン氏は、企業は企業PRを通じて「社会との意思疎通」すなわち、社会とのコミュニケーションを図るべきと主張しているわけですが、次の段階として、コミュニケーションで得られた情報や知恵は会社の活動に活かされなければなりません。

明日の前書きでは、社会との意思疎通で得られた情報を積極的に商品開発に応用し、その結果どうなったかをWEBサイト上で公開し、さらに親密な意思疎通を図ろうという実に模範的なPRをされている企業の取り組みを紹介します。この前書ではお馴染みのあの会社です。

ここから日経ビジネスが購読できます。いろいろなアイデアの源になります。1年間50冊で21,000円です。1冊あたり420円です。 

ちなみにBioToday.comの購読はここからどうぞ。1年間90ドルまたは12,000円です。いろいろなアイデアの源として活用していただけたら幸いです。

▽また、神経工学投資ニュースレター、ぼちぼち販売中です。

今日発行の医学誌 Arch Gen Psychiatry February 2006; Vol. 63, No. 2

Arch Gen Psychiatry February 2006; Vol. 63, No. 2をタイトルだけ要約。

Hippocampal and Amygdala Volumes According to Psychosis Stage and Diagnosis: A Magnetic Resonance Imaging Study of Chronic Schizophrenia, First-Episode Psychosis, and Ultra-High-Risk Individuals
Arch Gen Psychiatry 2006;63 139-149

精神疾患のステージと診断に対応した海馬と扁桃体の容積変化。慢性統合失調症、ファーストエピソード、超ハイリスク患者を対象にしたMRIイメージ試験。

Depressive Symptoms and Cognitive Decline in Late Life: A Prospective Epidemiological Study
Arch Gen Psychiatry 2006;63 153-160

人生晩年におけるうつ症状と認識機能低下。プロスペクティブな疫学試験

Increased Hippocampal Plaques and Tangles in Patients With Alzheimer Disease With a Lifetime History of Major Depression
Arch Gen Psychiatry 2006;63 161-167

大うつ病患者のLifetime Historyを有するアルツハイマー病患者の海馬の老人斑と神経原線維変化の増加

Role of Genes and Environments for Explaining Alzheimer Disease
Arch Gen Psychiatry 2006;63 168-174

アルツハイマー病における遺伝子と環境の役割

Clinical Course of Children and Adolescents With Bipolar Spectrum Disorders
Arch Gen Psychiatry 2006;63 175-183

bipolar spectrum disorder(双極性障害圏)の小児と青年の臨床経過

Corticolimbic Blood Flow During Nontraumatic Emotional Processing in Posttraumatic Stress Disorder
Arch Gen Psychiatry 2006;63 184-192

心的外傷後ストレス障害における非外傷性の感情処理中のCorticolimbic(辺縁系と旁辺縁系)の血流

Physical and Mental Health Costs of Traumatic War Experiences Among Civil War Veterans
Arch Gen Psychiatry 2006;63 193-200

南北戦争(Civil War)でのトラウマによる身体的、精神的代償

Effects of Lower-Cost Incentives on Stimulant Abstinence in Methadone Maintenance Treatment: A National Drug Abuse Treatment Clinical Trials Network Study
Arch Gen Psychiatry 2006;63 201-208

メタドン治療中の覚醒剤中毒患者に金銭的インセンティブを付与すると覚醒剤自制の割合が上昇する

Injectable, Sustained-Release Naltrexone for the Treatment of Opioid Dependence: A Randomized, Placebo-Controlled Trial
Arch Gen Psychiatry 2006;63 210-218

オピオイド依存に対する注射持続ナルトレキソンの治療効果

Six-Month Trial of Bupropion With Contingency Management for Cocaine Dependence in a Methadone-Maintained Population
Arch Gen Psychiatry 2006;63 219-228

メタドン治療中のコカイン依存に対する随伴性マネージメント(contingency management)+ブプロピオン(Bupropion)の6ヶ月の試験。

2006年02月04日

遺伝子ドーピング

今日の注目記事は、とっくに開発が中止されているOxford Biomedica社のEPOの遺伝子治療がドーピング薬として闇マーケットで出回っているかもしれないというニュースです。

どこで手に入れたのか分かりませんが、ブラックマーケットではいろんなものが出回っているようです。

Oxford Biomedica社のCEOの話では、この遺伝子治療薬を作るにはかなり高度な技術がいるようです。

最新鋭の“ドーピング”工場が世界の片隅でひっそりと営業していたりするのかもしれません。

そんな最新鋭の技術を駆使してドーピングを志す輩がいる一方で、ドーピングを取り締る専門家も黙っちゃいません。

 ▽遺伝子ドーピングが検出できないなんて誰が言った?

ドーピングをする側と取り締る側のいたちごっこは人間に“欲”がある限り果てしなく続くと思いますが、そのいたちごっこの中で人間の健康に役立つ何かが生まれて欲しいものです。

2006年02月03日

Amgen(アムジェン)とCephalon(セファロン)の共通点

今日の「注目の記事」で紹介していますが、主力製品・PROVIGILとの特許係争でCephalon社はBarr社とも和解を達成しました。

これで、ジェネリックチャレンジャー4社との戦いが終了し、Provigilのパテントは2011年10月まで無傷でいることができます。

Cephalon社は神経工学投資ニュースレターの2005年12月31日号で注目の会社として詳しく解説されています。
 
 ▽神経工学投資ニュースレター 2005年12月31日号
 
上記ニュースレターでは、Cephalon社の新規市場を開拓していく能力と高いマーケティング能力が評価されていますが、今回、4社のジェネリックチャレンジャーとのタフな取引を成功裏に終了させたことで、彼等には非常に強力なネゴシエーション能力が備わっていることが証明されました。

Cephalon社はPROVIGILのバックアップ製品・Nuvigilを開発しており、Nuvigilは近日中にアメリカFDAに承認される見込みです。

もしジェネリックチャレンジャーとの交渉が上手くいかなかった場合にはPROVIGILからNuvigilへの切り替えを早急に進める必要がありましたが、今回全てと和解を達成したことで、この切り替えは十分に時間をかけて行うことができます。

Amgen社の例を見ると良く分かるように、バイオベンチャーにとっては、いかにバックアップ製品をタイミングよく開発できるかが成長の鍵を握っています。

Amgen社は、Epogenの後にAranespを発売して、貧血領域では圧倒的なシェアを獲得しています。また、Neupogenの後にNeulastaをタイミングよく投入できており、特定領域でのプレゼンスを拡大させることを確実に成功させています。

バックアップ製品を抜かりなく、しかもタイミングよく開発しているところなど、Cephalon社はAmgen社にとても似ています。

またAmgen社は、経口薬がメインである市場の中で、「注射しなければならないタンパク質なんて売れっこない」という大方の予想を裏切ってEpogenを大成功させました。

一方Cephalon社は、過度の昼間の眠気という新規市場においてProvigilを成功させました。

そういう新規市場の開拓という点でもAmgen社とCephalon社は似ていると思います。

新規市場における卓越したマーケティング能力、強靭なネゴシエーション能力、バックアップ製品の開発能力、豊富なパイプライン。今のところ、Cephalon社には否の打ち所がありません。


神経工学投資ニュースレター2005年12月31日号
 

2006年02月02日

人の思い

独立してから母親に「やっていけているの?」とよく聞かれます。そう聞かれたら「大丈夫、やっていけてる」と答えるしかないのか男の子じゃないですか。

母さん大丈夫です。皆さんに助けられてなんとかやっていけています。

母親は田舎で田んぼとか畑をしており、お米とか野菜を定期的に送ってくれるのですが、昨日届いた宅急便にお守りが入っていました。



 
この袋には10年玉が入っていましてね、事業資金に入れて使うのだそうです。早速銀行に預けにいこうかと思います。感謝しています母上。

親の気持ちが分かってきたこの頃ですので、こういうのは身に沁みて嬉しいです。

さて、

先日エーザイのお客様窓口のすごさを紹介しましたが、昨日、エーザイのコーポレートコミュニケーション部の方から以下の小冊子が送られてきました。

▽feel Eisai


 

エーザイのある一人のMRさんが日々の活動で感じた“エーザイらしさ”についてまとめた小冊子です。

いろいろ良いことが書いてあるのですが、私が一番長く見てしまったのは一番最後のページの人事部採用グループの皆さんの笑顔でした。部長の中島氏を初めとして皆さん気持ちのよい笑顔を見せています。

小冊子の中では「家族に誇れる幸福といえる仕事をしよう」という趣旨の文章が書いてありますが、人事部の方が確かに幸せそうで、皆さん楽しんで仕事されているんだなあと感じました。

親に、夫に、妻に、自分の子どもに、特に自分の子どもに誇れる仕事をしていれば自ずと人をひきつける笑顔が生まれるのでしょう。

小冊子を読ませて頂き、そんなことを感じました。

一介の個人事業者に、手間をかけて冊子を送ってくれたというその気持ちにとても感激しています。エーザイを身近に感じました。こう思っている患者さんも多いことでしょう。多分そんな無数の思いがこの会社の繁栄を支えているのだと思います。

ありがとうございました。

2006年02月01日

キッセイ薬品の情報提供

さて昨日の続きですが、キッセイ薬品は「医療関係者向け情報」という以下の
ページで、

医療関係者向け情報

自社製品の情報を提供すると共に、ターゲット領域に関する以下の3つのサイトを運営しています。

ロイターPUROニュース

ロイターヘルスインフォメーション社から配信される世界の最新メディカルニュースの中から「前立腺肥大」と「排尿障害」に関するニュースを選択して医療関係者向けに提供。ニュースは遅れて和訳されています。

ロイター産婦人科ニュース
  
ロイターから、産婦人科関連のニュースを医療関係者向けに提供。ニュースは遅れて和訳されています。

ケロイド・肥厚性瘢痕治療情報Web

ケロイドに関するロイターのニュースを紹介したり、自社製品のリザベンの情報を提供しています。一部会員登録が必要なコンテンツがあります。  


医療情報を積極的に公開していこうという姿勢はすごく良いと思います。ただ、どんな基準でニュースを選んでいるのかをサイトに明記していない点がちょっと不親切かなと。

あと、ニュースを検索できないのも不便かもしれません。今後の機能充実に期待したいと思います。

さて、

今日はJAMAの発効日です。オリジナル報告とPreliminary Communicationは以下の4報です。タイトルだけ日本語訳しました。興味のある方は文献を直接ご覧下さい。

Relapse of Major Depression During Pregnancy in Women Who Maintain or Discontinue Antidepressant Treatment

抗うつ薬を継続または中止した女性の妊娠中のうつ病再発

【少し解説】妊娠は精神症状を防ぐ言われているが、それを調べた試験はなかった。今回の試験の結果「Pregnancy is not "protective" with respect to risk of relapse of major depression」となりました。

Bone Marrow Transplantation for Severe Combined Immune Deficiency

重症複合型免疫不全症に対する骨髄移植

Prevalence of HIV-1 in Blood Donations Following Implementation of a Structured Blood Safety Policy in South Africa

南アフリカにおける構造化血液安全性ポリシー(ドナー選択ポリシーと教育プログラム)実施後の輸血血液中のHIV-1の検出割合

Nonmyeloablative Hematopoietic Stem Cell Transplantation for Systemic Lupus Erythematosus

重症・治療抵抗性の全身性エリテマトーデスに対する骨髄非破壊的造血幹細胞移植の効果と安全性。


今日から2月ですね。私は会社の決算と確定申告をしなければいけません。かなり頭の痛い作業です。