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2006年01月31日

JNCI e-Update

今日の「バイオベンチャー関連ニュース」で、AtheroGenics社とAstraZeneca社の提携に関連して、AtheroGenics社が達成報奨金をうけっとたというニュースを紹介しています。

AstraZeneca社は、Exantaの販売がFDAに拒否されたり、肺癌を対象にしたイレッサの臨床試験で良い結果が出せなかったり、Toprol XLの特許係争で負けたりと良いことがここのところありませんでした。

ただ、AtheroGenics社やその他のバイオテックと提携して開発している製品が複数あり、これらの製品の開発がうまくいけば投資家の注目はさらに高くなっていくでしょう。

さて、

AstraZeneca社はオンコロジー領域に力を入れており、医療専門家向けに有益な情報を配信しています。

とりわけ私がよく使わせてもらっているのはJNCI e-Updateというサイトです。

 ▽JNCI e-Update

JNCI e-Updateでは、癌領域でインパクトファクターNo.1の雑誌・Journal of the National Cancer Instisute(JNCI)に掲載された文献のうち、肺癌、乳癌、前立腺癌領域の文献を日本語に訳してメールマガジンとWebで提供しています。

配信は、JNCIの発行の翌週の水曜日です。

訳の対象となるのが肺癌、乳癌、前立腺癌だけというのと、JNCIの発行後すぐではなくて翌週に更新というのが玉に瑕ですが、訳は読みやすいですし、後で参照するときにデータベースとして活用できます。

オンコロジー領域の専門家の方には有用なツールだと思います。特に、乳癌、肺癌、前立腺を担当されている方には必須のツールと言って良いかもしれません。

その他、AstraZeneca社は専門家向けに以下のようなサイトを提供しています。


 ▽専門情報

AstraZeneca社に限らず、多くの製薬会社は自社製品に限定せず、多くの医学情報を独自に配信していたりします。

そんなわけで、明日からは、企業が提供している医療サイトを少しづつ紹介していこうと思います。

明日はキッセイ薬品を紹介しようと思っています。

ではまた明日!


 ▽BioToday.comの全文購読はこちらからどうぞ。

2006年01月28日

口コミの力

今日初めてメルマガを読む方、はじめまして。いつも読んでいただいている方今後ともよろしくお願いします。

昨日は武田薬品の方から、前書きの内容について「気にしてないですよ」というメールを頂きました。お気遣いありがとうございます。

またエーザイの方から本日以下のような内容のメールを頂きました。

・患者様やご家族、そして生活者の皆様をどれだけ大切に考えているかを伝える機会があまりなく、どれだけ一般の方にその気持ちが理解されているか図りかねていた。

・だが、BioTodayニュースレターの記事(http://report.biotoday.com/216.php)を読み、毎日の業務に気持ちを込めていれば、患者様を大切に思う気持ちは感じてもらえるという勇気をもらった。

・これからも自分の業務が本当に患者様の役に立てるのかというスタンスを忘れずに仕事に臨んでいきたい。


みなさんがこういう気持ちを持っているので、エーザイのプレスリリースの文章には重みがでるのでしょうね。メールありがとうございました。今後のますますの発展をお祈りしています。

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最近はブログ等のツールを用いてネットで一般の人も情報発信するようになりました。お客様相談窓口での対応に対する感想をブログで発信するような人もいます。

だいぶ前になりますが、2005年10月31日の日経ビジネスには、日産のネット対策が紹介されています。この記事には以下のような記載があります。

「印象的なテレビCMを流し、ピカピカの店舗で待ち構えていても、サイトの品質や販売店の対応が悪ければ、ブログや掲示板で悪評を書きたてられる」

以前にもまして口先だけのマーケティングは通用しなくなっているわけです。

日産にはエレクトロニックカーライフアドバイザー(ECA)という部門があります。ここでは、ホームページを訪れる消費者の問い合わせにメールで対応し、過去の苦情なども隠さずに伝えるそうです。

包み隠さず率直に伝えること、それが消費者の信頼を勝ちえ、商品を販売する早道と日産は気付いているわけです。

日産の例でも分かるように、実際に現場で商品を売る営業と同じぐらい、問い合わせ窓口は今後は“営業的”な役割を担っていくことになると思います。

私も問い合わせ窓口の経験がありますが、患者さんに良い対応をしたら、その対応が主治医にも伝わっていたということがありました。

実際にそれが薬の売り上げ増加に繋がったのかどうかは分かりませんが、ネットを含めた口コミの力は大きいと思います。

医薬品は、今のところは吟味して購入するというような類の商品ではありませんので、車ほど熾烈な状況にはなっていないと思いますが、個別によい対応をすれば、良い影響となって戻ってくるようです。

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さて、昨日のニュースレターで太陽化学について紹介するとお伝えしましたがすっかり長くなってしまいましたので、明日の前書きで太陽化学を紹介したいと思います。

太陽化学はカップラーメンの具剤の1つになっている「あるモノ」を開発しました。既に日経ビジネスをお読みの方はご存知かと思いますが、月曜日の前書きでそのある物が何なのかお伝えします。ヒントは黄色です。あーわかっちゃったかなー。ではまた。

ここから日経ビジネスが購読できます。いろいろなアイデアの源になります。1年間50冊で21,000円です。1冊あたり420円です。 

ちなみにBioToday.comの購読はここからどうぞ。1年間90ドルまたは12,000円です。いろいろなアイデアの源として活用していただけたら幸いです。

2006年01月27日

将来の臨床試験のカタチ

昨日の前書きについて、読者の方から以下のようなメールを頂きました。

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> 患者様に対する気持ちは、対応時間だけで量れるのでしょう
> か?
> もちろん、エーザイさんの365日対応はすばらしいと思います。
> その対比のように出された武田薬品は、患者様を想っていな
> いから、365日対応してない大きな会社でも心がないといい対
> 応ができない、という誤解を生むのではないかと感じました。
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エーザイの対応がいかに際立っているかを具体的に示すために、日本を代表する製薬会社である武田薬品を対比に使用させていただきました。そういうことですので、武田薬品が患者への気持ちがないという意味で書いたわけではありません。誤解を招くような文章を書いてしまい、配慮が足りなかったと反省しています。

特に武田薬品の方には不快な気分を与えてしまったかもしれません。申し訳ありませんでした。


電話対応時間はあくまでも1つの例であって、患者さんを大切と思う気持ちの表現方法はいろいろあります。

今日の注目ニュースで取り上げているvilazodoneの第3相試験ですが、この試験では、有効性・安全性を調べると共に、vilazodoneへの反応性を予測するバイオマーカーの同定も試みます。

Clinical Data社は、このバイオマーカーを用いて、どの患者さんがvilazodoneで最も恩恵を受けられるかをスクリーニングできるテストを開発する予定です。

こういうふうに、薬剤が最も有用な患者を見分けられるようなテストを同時開発するという姿勢も、患者さんへの思いやりの顕れの1つでしょう。最大級の思いやりといっても良いかもしれません。

バイオマーカーを用いて薬剤の恩恵を受ける患者さんを同定するという手順は今後徐々に一般化していくでしょう。それを可能にする技術が発展しているわけですから。

今後はバイオマーカー検査を伴った薬の開発が主流になっていくように感じます。

製薬会社、バイオベンチャーで働いている方は、do no evilではなく、do what's best for humanityを目指して良い薬を開発して欲しいなと思います。

今後とも、お気づきの点がありましたらお知らせください。このニュースレターに返信すると清宮宛にメールが届きます。

明日の前書きは23日の日経ビジネスで取り上げられている太陽化学について紹介したいと思います。


【補足】
do no evilとdo what's best for humanityの簡単な解説は冒頭でも紹介した以下の無料レポートをご覧ください。

 ▽Googleが医学に果たす役割〜Googleで自分の遺伝子をググる? 〜

ではみなさんよい週末を!

2006年01月26日

すごいよエーザイ

今日初めてメルマガを読む方、はじめまして。いつも読んでいただいている方今後ともよろしくお願いします。

今日の前書きも昨日(http://report.biotoday.com/213.php)からの続きです。

今日の前書きはとても長いです。ご了承ください。

さて、

昨日の質問の答えですが。わかりました?答えはパソコンのOSです。

       ↓広告
  パソコン:OS→→→検索エンジン→→→商品
       ↑広告

OSはインターネット世界へのボトルネックなわけで、かならず人はここを通るわけです。いろいろな使用方法が考えられると思いますが、コンピューターの心臓部であるOSをおさえることは広告にとってとても重要なことだと思います。

今のところマイクロソフトは広告ではパッとしませんが、もしOSが広告の場として積極的に活用されるようになったら、ウィンドウズで圧倒的なシェアを持つマイクロソフトはとても有利になるでしょう。

さて、

以上はコンピュータの話でしたが、同じようなことが医療業界にもあてはまるのではないかと思っています。つまり以下のような感じで。


       ↓製薬会社の気持ち
  患者さま:心→→→医者→→薬局→→卸→→薬(製薬会社)
       ↑製薬会社の気持ち


これまでは、製薬会社は、医者を筆頭にして、患者と薬を繋ぐ部分にお金をつぎ込んできたように思います。

しかし、広告ではコンピューターの心臓部であるOSが今後は大事になってくるように、医療では患者さんのハートを大事にする姿勢が重要になってくると感じています。

これまでと違って、患者さんはネット等で薬剤の情報を簡単に引き出せるようになりました。この傾向はどんどん進んでいきます。

情報化が進めば、最終的には、専門家との話し合いの上で、患者さんは自分で薬や治療法が決めれるようになります。

つまり、治療を自分で選べるようになるわけで、治療を提供する企業は選ばれるように努力しなきゃいけなくります。

医師をどれだけ良く扱っても、患者さんがイヤって言えばその薬は売れなくなります。患者さんに最終決定権があるんです。

なので、患者さんと治療を繋ぐ医師や薬局ももちろん大事ですが、今後は、最終的な決定権を持つ患者さんを最もケアする必要があるとは思いませんか?

では患者さんを大事にするというのは具体的にどういうことなのか?

良い例があります。


最近エーザイが「英国に欧州戦略拠点を設立」というニュースを発表しました。このニュースには以下のような記載があります。

『当社は、企業理念を定款に記載し、その中で当社の使命は患者様価値の増大であり、これを実現するにあたっては、未だ満たされていない医療ニーズの充足、高品質製品の安定供給、薬剤の安全性と有効性を含む有用性情報の伝達に努めると明記しております。』

実際に、エーザイが患者さんをどれだけ大事に思っているかは、エーザイの以下のページによく顕れていると思います。

 ▽お客様ホットライン室

土日祝日はもちろん、年末年始、ゴールデンウィークも休まず、365日間電話をうけているそうです。

このページを見たときに患者さんがどう思うか?おそらく大事にされていると思うでしょう。この対応を知ってこの製品を使いたいと思う人も多いでしょう。私は強く思いました。

患者さんを大事にする心とそれを行動に移す勇気がエーザイに365日間電話窓口を解放させているんだと思います。

テクノロジーが発達すれば、モノやサービスと人の距離はどんどん縮まっていくと感じています。距離が縮まっていったときにより明確になるのは、そのモノやサービスを提供している会社や人の思いやりです。

以上より、最初に戻ってまとめると、

製薬会社への就職が内定し、神経工学投資ニュースレター2005年12月31日号も購入して勉強中の若者が私へのメールに記してくれた以下の気持ち、

> しっかり勉強して、患者様に新薬をお届けする夢を追いたいと思います。

は、ライフサイエンス従事者の心構えとしてはとても大事なんです。

バイオトゥデイも、心で付加価値がつけられるように精進していきたいと思います。

長文にお付き合い頂きありがとうございました!


 ▽神経工学投資ニュースレター:2005年12月31日号 特集【ADHD】

 ▽神経工学投資ニュースレター

2006年01月25日

患者様に向き合おうとする姿勢-2

本日、アルツハイマー病診断技術を開発しているNeuroptix社がエンゼルファンドで50万ドルを獲得したというニュースをお知らせしています。

アルツハイマー病を特集した神経工学投資ニュースレターの11月30日号では、アルツハイマー病の診断技術の最新動向も紹介していますがNeuroptix社の技術は紹介されていません。

そこで、神経工学投資ニュースレターを購入頂いた方には、「神経工学アップデート 2006Jan25 Neuroptix社のアルツハイマー病診断方法」というタイトルのメールをお送りし、Neuroptix社の技術を解説しています。

神経工学投資ニュースレターを購入したがメールが届いていないという方は「Neuroptix社届かず」というタイトルでこのメールに返信してください。折り返しメールをお送りします。


神経工学投資ニュースレター 2005年11月30日号 特集:アルツハイマー病

さて、昨日の続きです。

インターネット広告を例にして「患者に向き合おうとする姿勢」の重要性のついて考えてみたいと思います。

インターネットは主に情報や商品を探すために使用すると思いますが、その場合目的の情報のたどり着くには以下のように検索エンジンを使うことが大部分だと思います。

  パソコン→→→検索エンジン→→→目的の情報・商品(ひっくるめて商品)

商品を持っている人は、出来るだけ多くの人に来てもらうために宣伝をする必要があります。そこで、多くの企業が検索エンジン上に広告を出していますね。

検索して来てくれるのを待つのではなく、検索エンジン上に広告を出して、新聞のチラシやテレビ広告のように集客するわけです。


          ↓広告↓
  パソコン→→→検索エンジン→→→商品
          ↑広告↑


現時点では、検索エンジン上の広告がネット広告の主流であり、最も有効な方法の1つと考えられています。

しかし、実は、検索エンジン以上に広告を出す場所として有望な部分があります。

それはどこかというと、、、、、。

ちょっと考えてみてください。明日のメルマガでその答えを言います。明日はその答えをお知らせした上で「患者に向き合おうとする姿勢」がなぜかくも重要かについて私なりの考えを示そうと思います。

患者様に向き合おうとする姿勢

本格的に風邪をひきました。ここ3年ぐらい寝込むほどひどい風邪を引いたことがなく、今年も家族がばたばた風邪で倒れていくのを「俺は大丈夫」と高をくくっていたのですが、不覚にも風邪を引いてしまいました。ショックです。

妻がちゃんと世話を焼いてくれる姿を見ながら、家族が風邪を引いても「引いた奴が悪いんじゃい。気合が足らん」と心の中で毒づき、一切看病をしなかった己の利己的な振る舞いを猛烈に反省しています。今度からちゃんと世話をやいてあげようと思います。

さて本日、

製薬会社への就職が内定し、かつ神経工学投資ニュースレターも購入頂いた将来がとても有望な若者から、以下のような言葉が書かれたメールを頂きました。

> しっかり勉強して、患者様に新薬をお届けする夢を追いたいと思います。

この若者の「患者様に向き合おうとする姿勢」が、ライフサイエンスに従事する者にとって実利面において如何に大切かを、インターネット広告を例にとりながら、明日以降のメールでちょっと考えてみたいと思います。

神経工学投資ニュースレター

神経工学アップデート発行

本日、神経工学投資ニュースレターを購入頂いた方に「神経工学アップデート2006Jan23 to-BBB社の技術の詳細」というタイトルのメールをお送りしました。

神経工学投資ニュースレター 12月31日号 特集:ADHD」で簡単に紹介しているto-BBB社の脳内薬物運搬技術・2B-Transを詳細に解説しています。

今後も、神経工学投資ニュースレター購入者様には、ニュースレターでは説明不足な部分を補完する内容を提供していきたいと思います。

よろしくお願いします。


さて、


本日、ダウン症のお子様がおられるご家族の方から「ダウン症にアリセプト(ドネペジル)が効果があるというニュースがあるが、それは本当か?」という問い合わせを受けました。

調べた結果を以下の記事にまとめています。


2004年の報告 アリセプトがダウン症小児の言語を改善

8-13歳のダウン症小児7人を対象にした16週間のパイロット試験で、言語機能が改善しているようです。

ただし、僅か7人を対象にした試験ですので、なんともいえません。ClinicalTrials.govでドネペジル×ダウン症で検索したところ、該当する試験はありませんでした。

 ▽ClinicalTrials.gov

もし、ダウン症領域でドネペジルの最近の動向についてお詳しい方がおりましたら、ご意見伺えると幸いです。

よろしくお願いします。

花粉症治療候補・TOLAMBA

医学には全く関係ないですが、矢沢永吉とイチローの対談の様子が以下で読めます。最後の「オレはいいけど、ヤザワは何て言うか…」っていう部分に大爆笑してしまいました。うちの娘が将来言い訳に使いそうな言い回しです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060120-00000018-spn-ent

さて、今日の注目の記事で全文を紹介しているDynavax社ですが、花粉症治療候補・TOLAMBAの良好な第2/3相試験の結果が発表されて19日のNasdaqでは34%も株価が上昇しています。

確かに良い結果なのですが、2年目の花粉症シーズンにブースターを注射するとプラセボと有意差がつかないというのがとても気になります。

ワクチンに詳しい方がいましたら、この意義について教えていただければ幸いです。このメールに返信されますと、清宮宛にメールが届きます。

TOLAMBAはISSという技術が適応された面白いワクチンです。詳しくは注目の記事(メルマガでのみ全文公開)の部分を参照ください。

ISSについて更に詳しい情報が欲しいという方は以下をどうぞ。

http://www.dynavax.com/issimm.htm

2006年01月20日

丸山征郎教授からありがたいコメントを頂きました

先日、鹿児島大学 医歯学総合大学院大学 血管代謝病態解析学の丸山征郎教授から以下のコメントを頂きました。

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最近のBioTodayは、”血”が通ってきて、大変新鮮になりました。先の号でも、レプチンをダイエット後の体重のリバウンド防止に使うというJCIの論文に「眼からうろこ」と書いてありましたが、ただものではない、と感じ入った次第です。

あの論文(私は読んでおりましたので)を、眼からうろこと評価できるのは、失礼ながら清宮さんの鋭さだ、と感心致しました。そのような感性が最近のBioTodayには感じられます。
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丸山先生、ありがとうございました。

この前書き部分では、ライフサイエンス分野で仕事されている方に有益な情報提供していきたいと思います。

また、いろいろな研究成果に目を通しているという利点を活かして「一見すると異なるが、ちょっと考えると繋がっていた」というような新たな“気付き”が提供できればと思っています。

今後ともよろしくお願いします。

丸山先生には、神経工学投資ニュースレターの10月31日号(肥満)8月15日号(脳卒中)をお読み頂いています。重ねて感謝いたします。

2006年01月17日

韓国のファン教授、日本の多比良教授

今日初めてメルマガを読む方、はじめまして。いつも読んでいただいている方今後ともよろしくお願いします。

1月12日に韓国のファン教授の2つのScience論文が撤回されました。

Special Online Collection: Hwang et al. and Stem Cell Issues

撤回された論文は以下の2報です。

Patient-Specific Embryonic Stem Cells Derived from Human SCNT Blastocysts. Science 17 June 2005 308: 1777-1783; published online 19 May 2005

Evidence of a Pluripotent Human Embryonic Stem Cell Line Derived from a Cloned Blastocyst Science 12 March 2004 303: 1669-1674; published online 12 February 2004

つまりクローン胚からもとれた幹細胞も、患者に特異的な幹細胞も存在しないことになります。

さて、

韓国の幹細胞スキャンダルが大きな注目を集める裏で、日本のRNAi論文捏造に関する調査報告が発表されました。

日経BPによると、東京大学の調査委員会が、東京大学大学院工学系研究科の多比良和誠教授のRNAiに関する4本の論文について「再現性は確認できない」という結論を2006年1月14日出しました。

事件の経過は日経を見れば分かりますが、ちょっと調べた限りでは、東大にも東京大学大学院工学系研究科のWEBにも調査結果に関する報告は掲載されていませんでした。

東京大学大学院工学系研究科
東京大学

かなり大きな問題だと思うので、WEB上でも公開すべきと思いました。


多比良教授の研究の再現性の問題は日本RNA学会によって指摘されています。

彼等は12文献の再現性に問題を呈しており、今回調査結果が発表された文献はそのうちの4件です。

日本RNA学会会長から、実験結果の再現性に関して調査依頼があった論文12編

しかし、何で研究過程や成果を裏付ける資料を簡単に捨ててしまうんですかね

証拠隠滅したのか本当に捨ててしまったのかは分かりませんが、もし本当に捨ててしまったのなら、研究者としての資質に重大な欠陥があったと言われても仕方ないと思います。

2006年01月16日

ミツカンは心にもやさしい

さて、「酢は血糖値を下げる」というミツカンの研究成果を今日のメルマガで紹介しています。

このニュースに関連して知りたいことがあったのでミツカンにメールを出したところ、なんと日曜日にも関わらずミツカンからすぐにお電話頂き、丁寧に回答していただきました。

予想外に素早い対応にとても好感を持ちましたし、しかも適切な回答だったので疑問点がすっかり解消しました。

以下、電話で教えていただいたことです。

プレスリリースによると、試験が2つ実施されていまして実験1は「白米摂取時に、食酢入りのドリンクを同時摂取することで、摂取後 15分、30分、120分において、血糖値の有意な上昇抑制が認められた。」と紹介されています。

“食酢入りのドリンク”がミツカンが販売している特定の商品かどうかを知りたかったので、その旨ミツカンにメールで問い合わせたところ、上述したようにメールを出してから1時間後ぐらいに電話があり、

「販売している製品ではなく、今後この実験で使った食酢入りのドリンクを販売する予定もない」との回答を頂きました。

ただ、実験に使ったのは100mlあたり15kcal前後の低カロリーの飲料であり、ミツカンが販売している「マインズ」とよく似た製品とのことでした。

今回の実験では、食酢15ml入りのドリンク 100mlを被験者に飲んでもらっており、この15mlの酢には血糖上昇を抑制する酢酸が750mg含まれています。

マインズにも100mlあたり750mgの酢酸が含まれているとのことです。


メールは出したものの、そもそも返事が来ることをさほど期待していなかったし、返事が来てもそれほど有益な情報は聞き出せないだろうと思っていました。

しかしその予想をことごとく良い方に裏切ってくれて、その対応の素早さ、的確さに感動を覚えました。

すばらしいです、ミツカン。特に日曜日にも関わらず電話をくれた女性の方、すごく感じがよかったです。

で、ミツカンのホームページを覗いてみたのですが、こんなことが書いてあります。

「ミツカングループでは、現場での迅速な意志決定を重視した分社型カンパニー制をとっています。」

この“現場での迅速な意志決定”というのは本当なんだなと思わせる今回の対応でした。風通しのよい会社なんだと思います。

ミツカン

マインズ

▽マインズ in 楽天

◇6本
ミツカン マインズ 100ml*6本

◇箱(30本)
マインズ<毎飲酢> リンゴ酢ドリンク 1ケース(30本)

新年に耳を傷める人々、それを治療する人

さて、中国の祭りの映像などでは必ず爆竹がみられたり、結婚式などではクラッカーが鳴らされたりと、人間はめでたいときには大きな音をたてることが好きなようです。

しかし、陽気にみんながパンパンやっている裏で、爆竹の事故が原因で耳に外傷(音響外傷)を負い、感音難聴になる人もいるようです。

今日のメルマガでも紹介していますが、ドイツのバイオテック・Auris Medical社が、感音難聴を治療するAM-111という薬を開発しています。

http://www.biotoday.com/view.php?n=11077

Auris Medical社は今年1月1日にAM-111の臨床試験を開始しました。なぜよりによって正月に試験を開始するのか?

それは、ニューイヤーパーティーの爆竹が原因で音響外傷を被ってしまった人を目当てにしているからです。

AM-111は、新年を祝う行事の24時間以内に投与されたとのことです。すなわち、1月1日だけの試験。

この試験はドイツの2つの施設で実施されました。文字通りお正月返上で働いた先生方、スタッフの方、ご苦労さまでした。

2006年01月12日

セローノ in アメリカズカップ

Serono社の買収の動きが活発となっていますが、渦中のSerono社のCEO・ErnestoBertarelli氏は、2003年のアメリカズカップでスイスのTeam Alinghiを組織し、見事このチームを優勝に導いた人物です。

次回(32回)のアメリカズカップヨットレースは2007年にバレンシアで開催されますが、Bertarelli氏はシンジケートのヘッドとしてこの大会に備えて準備をすすめているようです。

アメリカズカップのヨットチームを組織するには莫大な資金が必要とされますが、Bertarelli氏の個人資産は実に70億ドルだそうです。

Bertarelli氏はシンジケートのヘッドであると同時にナビゲーターとして実際のレースにも参加します。

セローノのCEOとしての仕事、Alinghiのヘッドとしての仕事。どっちも楽しいだろうけど身売りしてしまうということはAlinghiの方が楽しいのかもしれません。

チーム紹介のBertarelli氏の部分を見ると、“If you see my boat, you will understand my management style”という文章
が書いてあります。これはどういうことなんだろう。

医学とはまったく関係ないですが、Alinghiのボートが他のボートとどう違うのかをご存知の方がいましたらぜひ教えてください。

WikiPedia アメリカズカップ http://tinyurl.com/bvr4a
32回アメリカズカップOfficial Web http://www.americascup.com/en/
Team Alinghiホームページ http://www.alinghi.com/en/

2006年01月11日

利害の対立

Arthritis & Rheumatism誌に掲載された抗TNF-α剤の臨床試験の報告で、著者とスポンサーの会社の金銭の授受が以下のように詳細に記されています。これぐらい詳細に書いてもらうと、逆にどうてもよくなってきます。

Dr. Breedveld has received consulting fees or honoraria (less than $10,000 per year) from Centocor, Schering-Plough, Amgen/Wyeth, and Abbott. Dr. Weisman has received consulting fees or honoraria (less than $10,000 per year) from Abbott, Bristol-Myers Squibb, Centocor, Amgen/Wyeth, Roche, Human Genome Sciences, Elan/Biogen, Regeneron, and Genentech. Dr. Kavanaugh has performed clinical studies for Abbott, Amgen, Centocor, Biogen-Idec, Bristol-Myers Squibb, and Genentech. Dr. Cohen has received consulting fees or honoraria (less than $10,000 per year) from Abbott, Genentech, Biogen IDEC, Scios, Amgen, Sanofi-Aventis, Chelsea Therapeutics, and Xencor. Dr. van Vollenhoven has received consulting fees or honoraria (less than $10,000 per year) from Abbott, Centocor, Schering-Plough, and Wyeth. Dr. Sharp has received consulting fees or honoraria (more than $10,000 per year) from Abbott, Amgen, Aventis, Centocor, Fujisawa, and Wyeth and consulting fees or honoraria (less than $10,000 per year) from Bristol-Myers Squibb and Schering. Dr. Perez is a member of Abbott's stock retirement plan. Dr. Spencer-Green owns stock in Abbott.

NanoCrystal技術

今日は、Elan社がNanoCrystal技術をEntreMed社にライセンスしたというニュースがありました。

NanoCrystal技術は、水に溶け難い化合物のバイオアベイラビリティーや吸収を改善する技術です。

効果は非常に優れていても吸収、分布、代謝、排出等の薬物動態が不良で開発を断念してしまうケースが多々あります。

NanoCrystal技術を使えばそのような化合物を救えるかもしれません。

TriCor (Abbott), Megace ES (Par Pharmaceuticals), Rapamune (Wyeth) 等のよく知られた薬剤にもNanoCrystal技術が適応されています。

もし、薬物動態が悪いが効果は優れているのでぜひ開発を続けたいという化合物をお持ちの方はElan社にコンタクトしてみるのは1つの方法かと思います。

NanoCrystal技術の詳細は以下をご覧ください。
http://www.elan.com/EDT/drug%5Fdelivery/nanocrystal_technology.asp

Elan社へのコンタクトは以下を参照ください。
http://www.elan.com/EDT/contact_us/default.asp

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◇上述のNanoCrystalの紹介のように、BioTodayニュースレターで取り上げて欲しい製薬、
医療技術があるというという企業の方がおりましたら「技術紹介希望」という
タイトルでbiotoday@biotoday.comまでご連絡ください。
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2006年01月10日

NEDOフェローのフォローアップ

配信が遅くなってしまい申し訳ありません。身内が交通事故にあってしまいばたばたしています。

今日のバイオベンチャー関連ニュースは、取り扱うべきニュースが全部網羅できていません。ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません。

これから残りのバイオベンチャー関連の記事を投稿していきます。お時間がある方は、以下のURLで今日の重要ニュースをチェックしてください。

http://www.biotoday.com/archives.php?date=2006-01-10

今日中には、今日取り扱うべきニュースが全部網羅できる予定です。

さて、

ここ2日間にわたってNEDOフェローの黒川氏に関する日経ビジネスの記事を取り上げてきました。

今日も黒川氏です。

黒川氏は現在サインポスト社のCEOですが、その前にはアイキャット社のCEOをしていました。

黒川氏の後任として、アイキャット社には西願雅也氏が就任しています。

立ち上げを黒川氏が担当して、本格的な事業開始に際しては経験豊かなプロフェッショナルが就任したのだと思っていたのですが、少し調べたところ、西願氏もNEDOフェローということを知りました。

 ▽NEDOフェローから2人目のベンチャー社長が誕生
 http://www.nedo.go.jp/itd/fellow/digest.html

 ▽西願氏のプロフィール
 http://www.nedo.go.jp/itd/fellow/houkokusho/03003488-0-1.pdf

このようなNEDOフェローの引継ぎで会社がうまく経営できるのかどうか、興味深いところです。今後の活動を追っていきたいと思います。

2006年01月09日

日経ビジネスが記事を捏造?

9日に紹介した日経ビジネスの記事ですが、読者様から頂いたメールでLive Doorニュースに以下のような記事が掲載されていることを知りました。

http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1543408/detail

インタビューに応じて話したことが、本人の意図とは違うようにとられていた可能性があるようです。

たしかに、あのような否定的な記事になると分かれば黒川氏もインタビューに応じなかったと思います。

この件についてネットを調べてみたところ、黒川氏に同情を示す記事が多い中で、黒川氏のことを痛切に批判しているブログがありました。

http://shaoz.exblog.jp/2833464/

黒川氏も、もっとどんな記事になるのかを事前に確認しておくべきだったのでしょう。もっとも、聞いたとして正確に教えてくれるとは考えにくいですが。

黒川氏にも脇が甘かった部分があったのかもしれません。

黒川氏に自分の身を当てはめてみた場合、日経が取材に来たら確かに二つ返事でインタビューに応じてしまいそうな気がします。

うまい話には裏があるということを肝に銘じておかないといけないなと痛感しました。

この件は教訓として手帳にメモしました。

◇取材をうけるときの注意

・取材の目的をキチンと聞く(可能であれば書面で残す)
・悪用されるような言動をさける(どうにでもとれるような言動はさける)

また、今回ライブドアニュースの存在を知らせてくれた読者の方、ありがとうございました。

2006年01月06日

NEDOフェローの活躍

古いのですが、2005年11月14日の日経ビジネス「虚妄の大学発バイオベンチャー」を読んでいます。

この号の中で、30-31ページに「税金で起業した青年社長」という記事があります。

大阪大学工学部を卒業して、NEDOフェローとなり、2社のバイオベンチャーの立ち上げに関わった黒川氏に関する皮肉たっぷりの記事です。

NEDOフォローとは、NEDOから給料をもらいながら、TLOなどで大学保有特許のライセンシング業務やベンチャーの事業計画を練る仕事を担当します。

NEDOフェローは、事業案を練るだけでなく、実際に大学発ベンチャーに経営者として参画することができます。

NEDOフェローの黒川氏も経営に参加しました。2社とも社長として参画しています。

2社とも上場すれば、黒川氏が保有する株式の時価総額がおよそ5億以上になるとのことです。

この上場益を見越して黒川氏は1億4000万円の家の購入も決めているとか。

5億もの見返りに値するかどうかは別にして、黒川氏は2社の資金集めや事業計画書の作成でかなり一生懸命働いたようです。

ただし、集めた資金には国からの補助金が多く含まれているとのことです。

実に、2007年までに国から4億3000万ドルを確保できる予定とのことです。

今後も、国の補助金を積極的に利用して会社の設立を助ける第2、第2の黒川氏が出現してくるでしょう。大学発バイオベンチャーにとっては良い動きだと思います。

ただ、多くの税金が使われているだけに、投資金額と、そのリターンがどれほどのものなのかを定期的に分かりやすく説明して欲しいと思います。

2006年01月05日

Googleで自分の遺伝子をグーグル?

医学関連ニュースのトップ「Googleが医学にどんな影響を与えているか」

http://www.biotoday.com/view.php?n=10954

で、Googleが医学情報の世界を変化させつつある現状を解説しています。

この報告によると、あるオンライン医学誌への訪問者誘導数のトップ2位はGoogleとGoogle Scholarでした。

PubMedはYahooに続いて4番目となっています。

Googleが圧倒的に1番なのは驚きませんが、去年リリースされたばかりのGoogle Scholarが既に2番目に位置しているのは驚きです。

Google Scholarの長所や短所についてはこの記事で解説しています。

今後学術文献のオープンアクセスが進めば、Google Scholar等の検索エンジンが文献検索と文献表示のスタンダードとなってくる可能性があります。

また、Googleが保有している技術を使えば、PubMedでは不可能な様々な検索が可能になってくるでしょう。

さらに、記事でも触れていますが、自分の遺伝情報を“グーグル”なんてことも実現すかもしれません。

近い将来には、自分の遺伝情報や病状を細かく入力すれば、適した治療方針を示したガイドラインを画面上に簡単に表示できるようになるかもしれません。

Googleがアルゴリズムに改良を重ねていけば、あまり勉強していない医師の役割ぐらいは果たせる医学ポータルができる可能性があります。

医学分野での今後のGoogleの活躍に期待したいと思います。

2006年01月04日

凍結卵子で出産

今日の生活関連ニュースで「商業的な卵子バンクから提供された凍結卵子で初の出産が報告された」という記事を紹介しています。

Cryo Eggs International(CEI)社の凍結卵子を用いて出産に成功しました。

CEI社は凍結卵子一つを2,500ドルで提供しています。

CEI社によると、この凍結卵子が解凍時に生きている割合は60.8%で受精率は68%、胚移植後に妊娠できる割合は30%以上となっています。

したがって、凍結卵子を10個購入して1つで妊娠に成功するという感じのようです。

凍結するよりも凍結前の新鮮な卵子の方が良さそうですが、CEI社は凍結することの利点を強調しています。

今後凍結卵子が普及すれば購入費用はもっと安くなるかもしれません。

不妊治療に悩むカップルは多いので、手に届く範囲の選択肢が増えると良いなと思います。

2006年01月03日

一年毎に目標を設定するのは学校教育が教えた悪習慣

新年あけましておめでとうございます。

年末のお知らせしたGMOの熊谷氏の以下の本をもとにして、今後15年間の目標を設定しています。

 ▽ 一冊の手帳で夢は必ずかなう http://tinyurl.com/bdnmu

熊谷氏に言わせると、一年毎に目標を設定するのは「学校教育が教えた『悪習慣』でしか」ありません。

熊谷氏は本の中で、人生の拠り所となる長期の目標設定、すなわち“夢”を持つことを勧めています。夢が無ければ、時間で区切った目標は場当たり的になる危険が高く、自分が意図した方向とは違う目的地に辿りついてしまう可能性があるからです。

夢という羅針盤があってこそ、1年間、1ヶ月、1週間といった時間を区切った目標設定がいきてきます。

ただ、自分の夢を分相応と感じたり、気恥ずかしさを感じてなかなか夢がもてないという方がいらっしゃるかもしれません。私もその一人でした。

そんな方には、熊谷氏の本に書いてある以下の文章をお贈りします。

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夢を持つことに関して、大半の人は「分相応の夢かどうか」を考えて
立ち止まってしまうかもしれません。でも、それは無意味です。人の
「分」というものは、夢に向かって努力するからこそ向上するのであ
って、夢を限定する物差しではないのです。
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この文章を読んで私は、分相応なんて考えずに大きな夢を持とうと思いました。大きな夢の実現に向けて小さな目標をちょっとづつクリアしていく。そうすれば苦しい時も乗り越えていけるような気がします。

皆さんの2006年が夢多き1年でありますように!本年もよろしくお願いします。