プラセボはパーキンソン病患者のドパミン分泌を促進する
前回の前書きでお知らせしましたとおり、今日はパーキンソン病に対するプラセボの意外な効果についてお知らせします。引用文献はこのニュースレターの一番最後の部分に記しています。
◇パーキンソン病とは?
パーキンソン病の主な症状は運動障害です。この運動障害は、運動を司る黒質線条体のドパミンレベルが低下することが原因で生じます。
◇パーキンソン病の治療
したがって、低下したドパミンを補うために外部からドパミンと同じ作用を有する薬剤を投与することがパーキンソン病の治療ではとても効果的であり、そのような作用を有する薬剤が主流となっています。
◇プラセボは線条体のドパミン放出を促進する
外部から補充する代わりに、線条体からのドパミン放出を増加させることもパーキンソン病の治療法として有効です。
2001年8月のScience誌に発表された試験結果によると、プラセボはまさにこの作用を発揮するようです。
試験の結果から、プラセボに反応してパーキンソン病患者の線条体のドパミン放出が上昇すると示唆されました。
また、興味深いことに、プラセボで症状が良くなったパーキンソン病患者ほど線条体のドパミン放出のレベルが高くなっていると示唆されました。このことから、プラセボ効果と内因性のドパミンレベル上昇には“用量相関性”があると考えられました。
◇プラセボ作用を臨床でいかす
3回にわたってプラセボ作用を解説してきましたが、プラセボ作用の正体とは、「自ら生み出した希望への生体の反応」といえるのではないかと思います。
したがって、患者さんにプラセボ作用をおこさせるには、希望を持たせることが重要なのでしょう。
例えば、もしAという薬剤を服用している患者さんが、主治医から「最新の動物実験で、Aという薬には○○という画期的があることがわかったよ」と説明されたら、少なからぬ患者さんが前途に希望を持つのではないかと思います。
動物実験の結果自体を人にすぐに当てはめることは出来ませんが、その結果を伝えることで患者さんに希望が生まれ、状態が良くなるという可能性が期待できると感じました。
動物実験に限らずとも、気持ちを奮い立たせるような情報を提供することは、薬剤を投与することと同じぐらい重要なのかもしれません。
◇まず信頼でしょうか
昨年の12月に、男性癌患者さんのパートナーの方からメール頂きました。
私がこのニュースレターで紹介している最新の癌治療の開発動向を知ることで、闘病への気持ちを奮い立たせ、免疫力を高めていたという内容のメールです。
今回プラセボ効果について時間をとって調べてみて、彼の体内では癌に対する抵抗力が確かに高まっていたに違いないと思いました。
彼の場合には私のニュースレターが希望の糧になったわけですが、信頼するパートナーからの情報という前提があってはじめて私のニュースレターが希望の糧になりえたのだと思います。
信頼関係のない人からどんなに良い言葉をかけられても、どんなに良い情報が提供されてもそれはプラセボ効果へと昇華することはないでしょう。
まず信頼関係を築き、希望を育むコミュニケーションをする。そういったコミュニケーションが生体に物理的に作用して症状を改善しうることはプラセボの研究から十分に予想できるのではないかと思います。
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