タバコ会社のマーケティング
「タバコなんざ、ガキや貧乏人に黒人、あとはバカに吸わせておけ(悪魔のマーケティング)からの引用」というスタンスでマーケティングを実行してきたタバコ業界ですが、その本質は今も変わっていないようです。
最新のLancet誌にはタバコ会社の内部資料のレビュー報告が掲載されています。(注目の記事参照)。Lancet誌には、人の行動様式を逆手にとったある種洗練されたタバコ会社のマーケティング戦略が紹介されています。
タバコ会社は、もっと人様に感謝されるような戦略をとって生きる道を探ってもらいたいです。とても難しいと思いますが、それはタバコ会社の使命でしょう。
さて、
タバコ会社の悪巧みが水面下で進行する一方、個人レベルで悪いことをした研究者に裁定が下されています。
韓国の幹細胞問題の中心人物、ファン教授とその他6人の研究者がソウル大学から解雇されることがほぼ決定しました。
ファン教授は卵子提供の強要や研究寄付金の不正使用などで刑事責任も追及されており、今後徐々に彼の悪さが暴かれていくでしょう。
一方、ピッツバーグ大学の調査委員会が、ファン教授の報告に共同著者として名を連ねるシャッテン教授に関する調査報告書をピッツバーグ大学に提出しています。
その報告の中で、ピッツバーグ大学の調査団はシャッテン教授は捏造には関与していなかったと結論しています。
シャッテン教授は今後もピッツバーグ大学でこれまで通り研究を実施できるとのことです。
幹細胞スキャンダルをめぐる対照的なニュースでした。
ところで、
研究成果を捏造してしまう研究者が一番悪いですが、その成果を簡単に掲載してしまう科学誌にも少しは責任があるかもしれません。
Vioxxの裁判で、Merck社は、NEJM誌に発表されたVioxxの試験成績を根拠にしてVioxx服用18ヶ月を超えると脳卒中や心臓発作のリスクが上昇するとと主張しています。
NEJM誌のトップエディターの一人が、Merck社のNEJM報告の使い方が気に入らないとして、NEJM報告には問題があるという証言をしています。
彼は、18ヶ月を超えると心臓発作や脳卒中のリスクが高くなるというのはあくまでも仮説という位置づけなのに、あたかも自明の事実であるような扱いをしていることに異を唱えています。
このエディターによると、NEJM報告の審査途中で仮説であることを明記するように訂正を依頼したのに、訂正は結局されなかったとのことです。
ただ、いくら議論の内容を今頃持ち出したとしても、既に掲載してしまっているので、NEJM誌は文献の内容を了承したことになるのではないでしょうか?
なので、今頃当時の議論をぶり返しても、いまいち説得力に欠けます。
本当に必要なら、訂正するまで掲載を許可しないというような強い姿勢が必要なんだと思います。
証言を信じれば、NEJMは結局妥協して掲載してしまったわけですので、レビューってそんなもんなの?って思われても仕方が無いかなあと。
NEJM誌のエディターの証言は、科学誌のレビューのいい加減さを浮き彫りにしてしまっているように思えてなりません。
なお、
現在ニューオーリンズで開催されているVioxxの裁判では、どの程度の期間Voxxを服用すると心臓発作や脳卒中がおきるのか?が焦点となっています。
原告の弁護士・Andy Birchfield氏は、Vioxxが死亡の原因であり、製造元であるMerck社が薬剤の危険を隠していたことを証明してみせると陪審に告げています。
Birchfield氏のまず最初の武器はNEJM誌のエディターの証言だと思いますが、かなり強気のようですので、他にもなにか有力な情報をつかんでいるのかもしれません。