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物語のような研究

昨日は、物語のような構成をした医学文献のアブストを読みました。

このメルマガの医学関連ニュースの1つ目の記事「緑茶製品で寛解を達成したB細胞性腫瘍4人の症例報告(http://www.biotoday.com/view.php?n=10764)」がその物語のようなアブスト構成の文献です。

この文献は、Mayo ClinicのKay NEの研究グループによる報告です。以下がこの報告のアブストラクト部分の抜粋です。

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Kay等は緑茶成分の抗癌作用について調べており、緑茶中のポリフェノール・epigallocatechin gallate (EGCG) は、慢性リンパ性白血病(CLL)患者から採取した白血病B細胞に細胞死を誘導する作用があるという研昨成果を去年3月のBlood誌に発表した。

この報告をうけて、多くの白血病、リンパ腫患者が緑茶成分が入ったOTC製品を服用するようになった。

実際にMayo Clinicの患者の中にも、独自に緑茶製品の服用を開始した患者がおり、研究者等は、独自に(勝手に)緑茶製品の服用を始めた患者の病状を調べてみた。

すると、緑茶製品の使用により実際に症状が改善している患者がいるとわかった。

このような事例は、緑茶ポリフェノールの使用方法や有効性を検討する臨床試験の必要性を強調している。

既に、アメリカNCIがスポンサーとなって、Kay氏主導の下で緑茶抽出物の第1/2相試験がMayo Clinicで始まっている( http://tinyurl.com/9afo3 )。

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基礎研究→事例研究→NCIの資金サポートゲット→臨床試験という流れが、まるで種を撒いてその芽が出るまでの過程を記すようにアブストにまとまっており、研究成果が臨床応用されていく過程がよくわかってとても興味深かったです。

この流れはバイオベンチャーの活動にとても似ています。「NCIの資金サポート」の部分を「投資家からの資金調達」に置き換えれば、バイオベンチャーの活動そのものになります。

つまり裏を返せば、

自分の成果を臨床に応用したいと思えば、バイオベンチャーのように「資金を得る」ためのビジネスや経営センスが医学研究者にも必要となってくるのです。

これまでにも何度か書きましたが、研究の意義を知ってその研究成果を実用化するための資金を得るには、まず自分が属している経済社会の規模や仕組みを知る必要があります。

自分が属している経済社会を知らなければ、研究成果は陽のあたらないところに永久に葬り去られるか、研究成果の価値を知っている人に搾取されるだけでしょう。

詳しく知る必要はないかもしれませんが、自分の研究を取り巻くビジネスを大雑把に把握することは自己防衛の一つであり、自分の価値を高めることに繋がっていく筈です。

楽しいクリスマスを!

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